〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第25章 白雪-sirayuki-《恋情編》❀真田幸村❀
「あ、ありがとう……」
「気をつけろよ、怪我はねぇか」
「大丈夫、幸村が守ってくれたから」
「ん、なら良かった」
いつもの癖で、美依の頭を優しく撫でる。
細い髪が指に絡み、なんだか久しぶりに味わうその感触を、思わず堪能していると……
美依がほんのり頬を染め、困ったように、さらに見つめてきた。
「どうした?」
「だって、そのっ…私達……」
「あ……」
美依が口ごもったのを見て。
俺は喧嘩中だったと言う事を、改めて思い出す。
思わず美依から手を離し、その手で後ろ頭を掻くと。
美依も視線を逸らし、小さく俯いた。
(あーくそっ……)
一気に気まずい空気が流れる。
しかもさっき『俺の女だ』発言してしまったから、余計に。
それでも、仲直りするために佐助に店番まで頼んできたのだ。
美依に謝る為に、そして……
自分の気持ちを伝える為に。
「……ちょっと来い」
俺はふいっと美依から顔を逸らすと、自然な流れで美依の手を取った。
そして、そのまま手を引き、歩き出す。
美依は半歩後ろで、手を引かれながら大人しく付いてきて。
小さな手で、俺の手をやんわりと握ってきた。
その手は冷たく、俺があっためてやりたいと。
そんな事を思って、小さく心が疼いた。
────気がつけば
今日も空からは、あの日のように粉雪が舞い始めて…
安土の町を、白く白く、儚げに染め始めていた。
────…………
そのまま、この前喧嘩別れした神社までやって来た俺達は。
神社の鳥居の所で向かい合いながら……
お互い黙って、立ちすくんでいた。
────それでも、お互いの手を握ったまま
どうしても離せなくて。
美依の小さな手を感じていたくて……
美依はどう思っているかは解らないが、やっぱり手を離してこない。
いつの間にか降り出した粉雪は、はらりはらりと空から舞い降りてきて……
美依の頭や肩に落ちては、美依を染め上げるように、キラキラと光った。