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〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀

第3章 華火と微熱と光秀さん《前編》❀明智光秀❀





「……っっ」




壊れ物に触れるかのように、優しく。
優しく優しく、光秀さんの親指が唇を滑る。

そして、拭うようにして、その指が離れると。

光秀さんは唇を拭った親指を、自分の口元に持っていき、ぺろりと舐めた。




「飯つぶが付いているぞ、子供のようだな、お前は」

「あ……」

「ああ、擦ったら紅が薄くなってしまったな……飯は取れたぞ」

「あ、りがとう、ござい、ます……」




(何これ、なんか変にドキドキするっ……)




不本意に熱が与えられ、やけに心臓が高鳴る。
きっと顔は真っ赤だろう。

なんだろう、光秀さん相手になんか悔しい。

そんな内心を見透かすように、光秀さんはくすっと笑うと、葛まんじゅうの最後の一口を口に入れ。

食べ終わったかと思ったら、皿と茶碗を簡単に机の中央に寄せると席を立った。




「また来る、女ならきちんと紅は差し直せ」




そう言って、こちらの動揺なんて気にもしていないように背中を向ける。

思わず立ち上がって背中を追い、その袖を後ろから引っ張った。

すると、やんわりした仕草で光秀さんは振り返り……
とても意味深に、そして不敵に口角を上げた。




「……なんだ」

「な、なんだって…そのっ……」

「ああ、悪い。『いつもの』をすっかり忘れていた」

「え……」




光秀さんの腕が、ゆっくり上に上がる。
そして、何がなんだか解らない内に……

その大きな手が、ぽんっと、頭に優しく触れた。


───くしゃっ……


そのまま少し撫でられれば、髪が指に絡まるような感触がして……

そのまま、すーっと毛先まで髪を梳かれた。







「今日もいい子で頑張れよ、美依」

「……っっ」

「またな」






光秀さんはなんだか優しく笑みを浮かべ……
そのまま茶屋を出ていった。

光秀さんが過ぎ去った後は。
なんだか涼やかな残り香が漂っている気がした。





「……って、何考えてるの、私……!」




心が落ち着かない。
光秀さんに触れられた唇は、まだ熱を帯び。

そこだけ、じんじんと痺れている気がした。

ふわりと撫でられた頭も、髪も。
その温かな温度と感触が残っている気がして……

心の中は、ざわざわと音を立てて、なびいていた。




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