〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第3章 華火と微熱と光秀さん《前編》❀明智光秀❀
───その日から
何故か、毎日のように光秀さんと顔を合わせる日々が始まった。
「光秀さん、何を食べますか?」
「いつものでいい」
「抹茶の葛まんじゅうですね、待っていてください」
大体昼過ぎ、客足がひと段落した辺り。
必ず光秀さんは抹茶の葛まんじゅうを食べにやってくる。
よっぽど気に入ったのか、何なのかは知らない。
そもそも、味が解るとは限らないし……
だって『美味しいですか?』と尋ねても、『知らん』と返ってくる。
じゃあ、何故毎日食べに来るのだろう。
何故、葛まんじゅうなんだろう。
その真意はさっぱり解らないまま──……
「光秀さん、今度神社でお祭りがあるんですよ」
「ほう、祭りか」
いつものように、光秀さんの席の向かいに座り、遅い昼餉を取る。
大体まかないは、決まってお茶漬けだ。
それを光秀さんと同じ席で、たわいない話をしながら食べる。
ほぼ毎日のように繰り返される『それ』。
何故光秀さんと一緒にこんなことをしてるのか、それはものすごい疑問であるが。
でも、悪い気はしない。
普段公務でも、光秀さんは裏で動いている印象が強い分、こうして普通にしている時が、やけに新鮮で。
そんな一面が見れると言うのは、無条件に嬉しい。
「屋台も出るし、花火も上がるって話ですよ。楽しそう」
「なんだ、俺を誘っているのか?」
「え?」
思わず聞き返すと。
光秀さんは葛まんじゅうを口に入れ、もぐもぐと唇を動かす。
すると、その形の良い薄い唇が、意地悪く笑み……
いつものように、からかうような言葉が、その唇から紡がれた。
「一緒に行ってください光秀さん、と可愛く言えたら一緒に行ってやってもいいぞ」
その言葉に、思わずカッとなる。
茶碗を置き、身体を光秀さんの方に前のめりにして…
またその挑発に馬鹿みたいに乗っかってしまった。
「な、何言ってるんですか、誘ってなんかないですよ!」
「なんだ、違うのか。しらじらしく祭りの話なんかするから、遠回しに誘ってるのかと」
「違いますったら違います!」
「そうわめくな…ほら、ちょっとじっとしていろ」
すると、言葉を遮るように、光秀さんの手がすっと伸びてきて……
親指が下唇に、やんわりと触れた。