〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第25章 白雪-sirayuki-《恋情編》❀真田幸村❀
「美依がなんで口づけたんだって聞くから…」
「聞くから?」
「お前の唇が寒さで切れそうだったから、なんとなく口づけたって答えたら…」
「……答えたら?」
「幸村のばかって、俺もつい『ばかって言う方がばか』とか言っちまったから、喧嘩になって……」
素直に『お前が可愛いから口づけた』とは言えなかった。
あいにく、そんな歯の浮くような台詞は持ち合わせてはいない。
とっさに誤魔化したくて、嘘をついた。
そこからは……もう子供の喧嘩である。
佐助はそれを聞くと、小さくため息をついて……
呆れたような視線を向けてきた。
「なんとなくで激しく口づければ、それは美依さんも怒るよ」
「悪かったな、可愛すぎて…つい貪って止まんなかったんだよ」
「むしろ、それをそのまま言ってあげた方が良かったんじゃ。美依さんは口づけた事に怒ってるんじゃなく、その理由に腹を立てたんだろうから」
「……」
(口づけた事に怒ってるんじゃない……か)
確かに、口づけていた時の美依の顔は。
びっくりしながらも、トロンと蕩けていて……
それはもう可愛くて、その先を望んでしまったくらいだ。
でも美依とは恋仲でも、何でもない。
多分、友達とかそのくらいの距離なんだろう。
それでも……
毎日会いに来る美依に、もしかしたら…と言う期待は持っていたのかもしれない。
だって。
(────俺は美依の事、すげぇ好きだ)
俺が一人悶々と思考を張り巡らせていると。
佐助が気持ち悪いくらいこっちをじーっと見ながら、淡々と言葉を続けてきた。
「美依さんに謝りに行ったら。ついでに、幸村の気持ちもきちんと伝えた方がいい」
「……」
「美依さんだって、何も想ってなければ、毎日会いに来たりしないよ。そこは自信持っていい」
「……解ってるよ、そんな事は」
俺だって、そのくらいは考えてる。
多分望みは零じゃない、『もしかしたら』の可能性もある事くらい、俺でも解る。
ただ、きっかけが掴めなかっただけだ。
俺は佐助を見ると、軽く頭を下げ…
本当にらしくない頼み事を、佐助にする事にした。