〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第24章 カンタレラに久遠の蜜謳を《後編》❀上杉謙信❀
「───お前と、同じ世界が見たいと思っていた」
「え?」
「俺は戦しか知らない。戦場で俺は生き、死ぬ事が当たり前だと…そう思っていた。だが、お前は違う。もっと優しく温かい眼差しを持っている」
「謙信様……」
「だから、お前が見ている世界を感じたいと、ずっと思っていた。ぬるま湯でも、お前の見ている世界はきっと…素晴らしいものなのだろうな」
美依が首だけで振り返り、少し痛そうな瞳を向ける。
そんな目をするな、美依。
不可能だと思っているのだろう?
俺は所詮、血塗られた世界に生きている軍神。
お前とは、真逆の立ち位置で生きている人間だ。
見られる筈がないと……そんな事は解っている。
(想いが通じ合った事自体……不可思議なのだからな)
俺がそう思っていると、美依は身体を捻り。
俺の首に、ぎゅっと抱きついてきた。
思わぬ行動に少し面食らう。
すると、美依は俺の瞳を覗き込みながら…
まるで囁くような、優しい声色で言ってきた。
「私の見ている世界は、謙信様の居る世界ですよ」
「は……?」
思わず聞き返すと、美依は小さく笑い。
そして鼻先が付きそうな距離で言葉を続ける。
「優しく温かいかは解りませんが、素晴らしいですよ。だって目の前に謙信様が居ますから…幸せで、素敵な世界です」
「美依……」
「今まで見てきた世界は共有出来ないかもしれないけど、これからは一緒に見れます。だから、一緒に謙信様の世界を見ていきます…ずっと貴方の傍で」
「……っっ」
「そーゆー意味では、私は貴方に囚われたままでいいんです。私は…ずっと謙信様のものでしたよ」
(ああ…お前は、本当に…………)
何故、お前みたいな女が傍に居て。
俺の欲しい言葉をくれるのか。
────それはきっと、答えは単純
お前は、ずっと俺を見ていてくれたのだな。
全てを解って、だからこそ。
このように、泣きたくなる程の幸せを与えてくれる。
お前は儚く弱い。
戦場で放っといたら、真っ先に死ぬだろう。
────だが、誰よりも強い
その強さと儚さを兼ね備えたお前だからこそ…
お前は、こんなに美しく笑えるのだ。