〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第24章 カンタレラに久遠の蜜謳を《後編》❀上杉謙信❀
(美依……お前はやはり天使なのだな)
例え、俺が修羅の道に走ったとしても。
お前はふにゃりと笑って傍にいるのだろう。
そして、愛らしく言葉を紡ぐのだろう。
『謙信様、愛しています』と。
俺は、お前しか見えない、美依。
だから、もう二度と口にはしないでくれ。
────『大嫌い』『死ぬ』などと
片割れでは、生きてはいけないから──……
そして、俺がお前に対して盲目なように。
お前も溺れてみせてくれ。
毒し毒され、生きていくのも悪くない。
そうして春が来て、芽吹いていく。
俺もまた、お前に温められて。
────焦がれながら、紅い雪の花弁となる
────…………
「……まだ、痛むか」
美依と共に湯に浸かりながら、先程手枷で繋いだ右手首を優しく撫でる。
美依は俺の膝の上で後向きに座り、裸の胸に身体を預けながら……
小さく首を横に振った。
「傷はたくさんありますけど、そんなに深くないから大丈夫ですよ。血も…そんなに出ていないし」
「……済まなかった」
「謝るくらいなら、最初からしないでください、本当にもう」
背中から抱き締められ、美依がくすくす苦笑する。
俺は美依の濡れた肩に顎を乗せると、そのまま掴んだ手首に唇を押し当てた。
ちゅうっと音を立てて吸い付き……
そして舌で滑るように這うと、美依は小さく震えて息を吐く。
「なんだ、染みるか?」
「ち、違います、ただ……」
「ただ?」
「優しく愛してくださいとは言いましたが、こうやって甘やかされると…どうしたらいいか、解らないだけです……」
(なんとも……可愛らしいな、お前は)
あんまりすると、今度は吐息を甘くしそうだ。
それも捨て難いが、さっき激しく貪ったし、無理はさせられない。
俺は途中で止め、手を離すと……
今度は美依の腹に腕を回し、そっと引き寄せた。
すると、美依は安心したように微笑んで、回した手に自分の手を重ねてくる。
そんな可愛らしい表情を肩口で見ながら…
俺は、心に思っていた本音をぽつりと呟いた。