〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第24章 カンタレラに久遠の蜜謳を《後編》❀上杉謙信❀
────はらり、ひらり
儚い言ノ葉が、紡がれ、そして…
雪のように舞い散っていく。
静寂の、冷たい冷たい牢。
火照る躰を持て余し…
無理やり我が物にした、これが末路か?
───『大嫌い』と。
自ら命を絶つと、そこまで。
俺は…もう踏み止まれないのか。
「……」
美依は微動だにせず、静かに聞いていて。
その澄んだ瞳には何を映し、何を思っているのか。
俺には、理解が出来なかった。
やがて、美依は頬に当てた手に、己の手を重ねてきて…
なんだか小さく笑って、その薄桃の唇を開いた。
「嘘です、自害するなんて嘘ですよ」
「……」
「それに、ごめんなさい。大嫌いなんて言って……私は謙信様の事、大好きです。不器用で、子供みたいな貴方が」
「あ……」
「こんな困った人、放っておけないじゃないですか。そんな寂しい目をされたら…離れられません。だから…もっと優しく、愛してください…お願い」
(美依────…………)
途端。
目頭が熱くなって、目の前が滲んだ。
酷く犯した俺を、大好きだと。
離れられないと、お前は……
そんな風に、優しく笑うのか?
────雪が、溶ける
頑なに燻っていた感情が。
見る見る崩れて、蕩けていく。
そして、新たな熱を生む。
もっと柔らかで、優しくて。
まるで陽だまりのような、包み込ような……
そうか、雪が溶けたら
儚く消えて、無くなるんじゃない。
雪が溶けたら……
(────春に、なるのか)
「お前は…俺に温もりを呼んでくるのだな、美依」
俺は、腫れた美依の瞼にそっと口づけた。
そして、鼻先、頬、唇。
順々に癒すように、唇で啄んでいく。
すると、美依は目を見開き、少し驚いたような顔をして。
何故か少し困った笑みで、こう呟いた。
『なんだ……謙信様は、こんなに優しい口づけも出来るんじゃないですか』と。
────その後、俺達は温もりを分かち合った
改めて重なった唇は、蕩ける程に甘く。
眩暈がする程に、優しかった。
がむしゃらに奪った時には気付けなかった柔さに…
視界が滲み、困惑する迄に。