〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第24章 カンタレラに久遠の蜜謳を《後編》❀上杉謙信❀
────刹那
身体中の毛が逆立って、ゾワッと肌を撫でた。
あまりの美依の瞳の美しさに。
言葉を忘れて、口がカラカラに乾いていく。
今、美依は何と言った?
俺を……
(────愛しているだと?)
「私、本当に謙信様の事を愛しています、だから…こんなやり方をしなくたって、望んでくれれば喜んで貴方に全てを差し出しました」
「美依……」
「でも…貴方は私を閉じ込めて、そうやって弄びたいんでしょう?こんな、強姦みたいな…こんな事して。満足ですか、私の気持ちも聞かず、身体を犯して満足ですか?!」
「……っっ」
「だから、自害します。貴方を殺して、私も死にます……こんな酷いことは、もう沢山です!」
(────俺は、なんて愚か者だ)
美依の本心を聞いて、目から鱗が零れる。
はなから決めつけていた。
美依はこちらを見ないから、他の男を無自覚に誑かすから。
閉じ込めて、自分の物にしてしまおうと。
しかし───………
美依の気持ちは、単純だった。
美依は俺を見ていた。
気が付かない内に、屈折した感情ばかりが膨らんで。
真っ直ぐな気持ちを、俺は見ていなかった。
────そう、望めばすぐに
それは手の届く場所にあったのだ。
温かな温もりも、優しい眼差しも。
たった一言『お前が欲しい』と伝えていれば。
「俺は……お前を弄びたかった訳ではない」
俺は、ぽろりと言葉を漏らした。
そして、両手でそっと美依の頬を包む。
────欲しかった、お前が
ただ、単純に。
俺の傍に、居てほしかった。
「お前が欲しかった。気持ちが募って苦しい程に……」
「謙信様……」
「お前を傍に置きたかった、どうしても。俺だけを見てほしかった」
「……」
瞳を見つめて伝える。
ありったけの想いを。
心の中に巣食う感情を。
俺は。
俺は、お前を────…………
「愛している、美依。狂おしい程、ただお前だけを……愛しているんだ────…………」