〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第1章 蜜毒パラドックス《前編》❀豊臣秀吉❀
「はぁ──………?!」
美依は思わず呆れて声を上げた。
つまりは嘘を隠すために、嘘をつくと言う事。
美依は思わずしかめっ面になって光秀を見上げる。
「嘘がバレないように、でっち上げるって事ですよね?」
「その通りだ。宴に正室が参加しないのは世間体が悪い。今日はなかなかに聡いな、お前」
「すぐ解っちゃいますよ、そんな嘘!」
「大名が捕まった後に解る分には問題ない、とにかくお前は身なりを整え秀吉にくっついていればいい。ああ、側室の件で多少ふくれっ面にしていてくれれば、尚よし。つまり、秀吉とお前は俺が裏で動いている間の引き付け役だ」
「そんな簡単に言いますけど…」
嘘は苦手だ…
そんなことを思い、美依はため息をついた。
すぐに顔に出る性分故に、隠し事や演技は本当に向いていないと思う。
そんな美依の様子を見て、光秀はぽんと美依の肩を叩くと。
内心を見て見ぬ振りをするように、面白がって話を続ける。
「心配するな、秀吉と俺を信じろ」
「はぁ…」
「謀反の裏が取れ大名に隙が出来た時点で、すぐに大名を叩く。だから、お前の『妻』は俺や三成が、大名を捕まえるまでいい」
「……」
「ちなみにこの策の発案は信長様だ……その意味が解るな?お前の名演技を期待している」
『信長様の発案』
それは、絶対に断れないと言う事を意味していた。
盛大にため息をつく美依の傍らで……
光秀は遊び物を見つけた子供の如く、面白がってにこにこと笑っていた。
────…………
(あーあ、大変なことになっちゃったな)
宴の当日。
用意された鮮やかな花柄の打ち掛けを見ながら、美依は盛大にため息をついた。
今日これを着て、秀吉の妻役をやる。
演技なんて本当に苦手だ、嘘も下手だし。
ただ、周りに解ってしまったら、秀吉の顔に泥を塗ることになる。
それだけは絶対避けなければいけない。
謀反の大名を捕まえる、今日は普通の宴とは訳が違うからだ。
(でも…相手が秀吉さんで良かったなぁ…)
それは素直に喜べた。
演技でもなんでも。
───好きな人の妻になる事が出来るのだから