〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第1章 蜜毒パラドックス《前編》❀豊臣秀吉❀
『俺の言う事ちゃんと聞けよ?お前はなんか、ほっとけない』
そう言って、甲斐甲斐しく面倒を見てくれる秀吉さん。
過保護な兄と、世話のかかる妹。
少し物足りない、でも丁度いい関係。
でもね、私だって女なの。
そして、秀吉さんは男の人なの。
少しくらい、意識してくれてもいいじゃない?
貴方が好きです。
私は貴方の大切な人になりたい。
私だって、幸せになりたいから──……
「えっ……私が秀吉さんの妻役に?!」
光秀の言葉に、美依は思わず素っ頓狂な声を上げる。
ここは秋が深まる安土城。
だいぶ気温は下がり、冬の気配も見え隠れしていた。
そんな中、光秀に呼び止められた美依。
『今度行われる宴の事で話がある』
そう言われ、話は始まった。
宴の事は、なんとなく話には聞いている。
確か地方の小さな大名が呼ばれていて、美依も織田家ゆかりの姫として宴に出る事になっていた。
「なんで急にそんな話になったんですか?!」
「まぁ、聞け。地方から小大名が来るのは知っているな?その大名が謀反の疑いがある事も」
「はい……この前呼ばれた軍議で聞いてます」
「宴にかこつけて、大名が企む謀反を暴くんだ」
よくよく話を聞くと、そもそもがその大名の謀反の証拠を掴むために、催される宴だったようで。
信長様直々に、その大名を宴に招き……
敢えて『謀反を起こしやすい状況』を作って、ねずみ捕りにねずみを追い込む作戦なのだとか。
「それが、なんで私が秀吉さんの妻役をやる事に繋がるんですか」
「なかなかに聡いな、美依。実はな、この大名…秀吉を大層気に入っていて、娘を妻に迎え入れてほしいと前々から言ってきていてな」
「はぁ……」
「だが、秀吉は『既に正室が居る』と言う理由で断っていたんだ。勿論それは嘘なんだが…今回は大名を油断させるのに、その『嘘』を利用する事にした」
「利用する?」
すると、光秀はにやりと不敵に笑い。
片眉きゅっと釣り上げて言った。
「秀吉はどうやら理由があって、側室を迎えようとしている。そのデマを大名に伝えたところ、俄然宴参加に乗り気になったらしい。そこで…奴が仕掛けてくると思って間違いない」