〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第23章 カンタレラに久遠の蜜謳を《前編》❀上杉謙信❀
────現に、今の状況は至極不愉快だ
「いい飲みっぷりだなぁ、君と飲むと楽しいよ」
「ふふっ、信玄様ありがとうございます」
「でも潰れるなよ?昨日大変だったんだから」
「その割には嬉しそうに部屋まで運んでたような」
「佐助、うるせー」
酒を酌み交わす四人。
美依は酒にあまり強くないと言うのに、ふわふわしながらも飲み進めている。
実際、昨日は酔い潰れて、幸村が部屋まで抱いて運んで行っていた。
そんな状況で、襲われでもしないかと考えないのか。
天然と言うか、無防備過ぎると言うか。
「うーん、今日も大分赤いぞ、お前」
「幸村、大丈夫だよー」
また幸村に頬を撫でられているではないか。
何故、そう簡単に触れさせるのか。
(────俺は、指一本他の男には触れさせたくない)
どす黒い感情が生まれる。
美依に触れていいのは、この俺だけだ。
その白い肌も、艶やかな髪も、薄紅の唇も。
お前を彩る全ては、俺の物だ。
俺だけを……満足させるものだ。
────なのに美依、お前は
無防備に他の男に触れさせ、ふにゃふにゃ笑い。
その愛らしい笑みを、俺以外に向けている。
お前は、俺だけに笑っていればいい。
何故、それが出来ない?
お前は……俺の物であるのが相応しいのに。
(────出来ないならば、いっそのこと)
醜い劣情が暴走し始める。
抑えていた、奥底に押し込めていた熱。
それは黒炎となって、心を蝕む。
止まらない。
滲み出た、狂った強欲が。
────身の内を暴れ回って、抑えられない
「……美依」
「謙信様?……わぁっ」
俺は盃を投げ捨て、立ち上がって美依に近づくと。
その小さな身体を、有無も言わさず抱き上げた。
いきなり横抱きにされた美依は目を白黒させていたし、美依に群がっていた三人も目を見開いたが。
そんなのは気にせず、宴席から美依を抱えて連れ出した。
「おい、謙信?」
「謙信様、おーい……」
信玄や幸村が背後から声を掛けてきたが。
そんなのは無視して、宴の部屋から出て廊下を進んで行く。