〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第23章 カンタレラに久遠の蜜謳を《前編》❀上杉謙信❀
────その日は、牡丹雪が降っていた
かじかむ手に手枷を付けて、繋いで、
そして……躰を犯した。
灼熱の心は、不器用なまでに暴走し。
俺はお前しか見えていないと言うのに、
お前は何故……俺だけを見ない?
『愛している、狂おしい程に』
美依、この手に堕ちてこい。
さすれば永遠に繋いで閉じ込めてやろう。
────だから、おいで
(……気に食わんな)
己の手で酌をしながら。
俺は眉をひそめ、不機嫌なまでに視線を送った。
視線の先には美依。
そして、美依に群がる幸村、信玄、佐助。
今日は春日山城で、小さな宴会が執り行われていた。
いや……正確には『今日も』か。
美依が春日山城に来て十日余り。
友である佐助を訪ねて越後へ来た美依は、すでに城に馴染み……
その事が嬉しい信玄や幸村は、毎夜宴席を設けては、美依を構い倒していた。
────今は信長とも和睦が進み、戦も殆ど無い
戦場の心躍る瞬間が遠ざかったのは、正直不本意だ。
心穏やかな時間など、ぬるま湯のようで居心地が悪いし……
『思い出したくない事』まで思い出させる始末だ。
それでも……
平和な世の中は訪れて良かったのだと。
美依を見ていると、それは嫌でも感じた。
「幸村は本当にお世辞とか言わないよね、もう」
美依が視線の先で柔らかく笑む。
それは荒んだ心の中に咲く、一輪の純白の花だ。
『私、謙信様が戦以外でも楽しいと思える事を、必ず見つけます』
いつしか、美依は俺にそう言った。
それからだ。
『戦狂い』だった俺が美依に興味を持ち。
あまつさえ、この手で愛でたいと感じ始めたのは。
一旦そちらに傾いてしまえば、それは雪崩の如く想いは膨らんで……
そして、今では。
その烈火のような激情を、持て余す始末。
(女に溺れるなど有り得ない、しかし俺は、美依に囚われた)
美依を自分の物にしたい。
ずっと離さず、傍に置きたい。
その感情は抑えているつもりでも…
気がつかぬ内に限界まで膨らんでいたのかもしれない。