〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第22章 艶熱蝶々-視線の鎖- ❀明智光秀❀
「美依……」
「光秀さん、やっと起きた!もう、これはなんの意地悪ですか、一緒に布団で寝るなんて!」
「ん?」
「風邪が移ったら、どうするんですか?!」
美依の言い分に、思わず目が点になる。
なんの意地悪ですかとは……
それはつまり。
昨夜の事を覚えていない?
俺はひとまず美依の額に、己の額をくっつける。
どうやら、熱は下がったようだ。
それにこんなにわめく事が出来るのだから、だいぶ体調はいいのだろう。
「ふむ、熱は下がったようだな、良かった」
「そ、それはありがとうございます……」
「お前、昨夜のこと覚えていないのか?」
「昨夜?」
「お前、昨夜……」
何がなんだかさっぱり解らないと言った様子の美依。
俺はそれを見て、説明する口を止めた。
やっぱり熱に浮かされた戯言だったのか。
それなら、説明しても混乱させるだけだ。
なら……言うのは合理的では無い、無駄である。
覚えていないのは…残念だけれど。
「……いや、少し意地悪してやろうと褥に入り込んだだけだ。まぁ、熱が下がったならいい」
そう言って俺は美依を離すと、褥から身を起こす。
すると、美依は何かに気がついたように『あっ』と言って……
起き上がる俺を見つめながら、不思議そうに尋ねてきた。
「もしかして光秀さん、昨日夕餉を運んできてくれました……?」
「ん?」
「ほら、お盆。私昨日、夕餉を食べた記憶がないんです」
そう言って、枕元を指差す。
そこには、俺が昨日悪戦苦闘して作った『卵きのこおじや』が入った鍋が、盆に乗って置いてあった。
あ、そうか。
忘れているような気がしたのは、これか。
改めて思い当たって、思わずため息をつく。
まぁ、作るのは確かに苦労したが、昨夜はそれどころでは無かった。
無駄にはなったが……それは仕方が無い。
「俺が作った、お前の夕餉だ」
「え……光秀さんが作ってくれたんですか?」
「まぁな、だがもう食うなよ?冷えきっているからな」
俺がそう言って、褥の横に胡座をかくと。
美依は何故か首を思いっきり横に振って。
そして、どこか嬉しそうに笑顔になった。