〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第22章 艶熱蝶々-視線の鎖- ❀明智光秀❀
「美依、ほら…水を飲め」
「……」
「美依……?」
片腕でしっかり美依の身体を抱き、片手で口元に茶碗を持って行ったが。
美依は、自分で飲む気配が無い。
こちらに身体を預けたまま、荒い息を吐き……
そのまま苦しいといった様子で、再度目を閉じてしまった。
「美依?……おい、美依っ……?」
俺は茶碗を再度下に置くと。
その手で美依の身体を揺すった。
しかし……
苦しそうに身体全体で荒い息をするだけで、動かない。
燃えるように熱い身体。
それは意識すら遠ざけたのか。
────これは、まずい
「美依、今誰か呼んでくる、少し待っていろ」
このままでは、美依が危ない。
直感的にそう感じ、俺は誰か人を呼んでこようと。
もたれ掛かる美依の身体を褥に寝かせるべく、肩を掴んで引き離そうとした。
しかし───………
「……っっ!」
胸元を掴まれた感覚がして、思わず動きが止まる。
見ると、意識が遠のいたはずの美依の手が、しっかり俺の襟元を掴んでいて。
そのまま弱々しい声色で……
美依はうなされるように、ぽつりと呟いた。
「……行かないで、光秀、さん………」
(……っっ!)
その声は──……
俺を鎖のように縛り付けた。
こんな美依を放っとけない。
少しでも、目を離せない。
それは、美依が愛しいから。
────美依を、愛しているからだ
「……解った、傍に居よう」
俺はもう一度美依を優しく引き寄せ、今度は両腕で抱き寄せた。
汗でぐっしょりした、熱い身体。
水も飲めない、意識も朦朧としているのに。
────俺に、行くなと言うのか
なら、傍に居てやろう。
お前が行くなと言うならば……
俺が傍に居て、癒してやる。
そう思い、抱く腕に力を込める。
ただ具合悪くて、心細くて、人が恋しいだけかもしれない。
傍に居るのは、俺で無くてもいいのかもしれない。
でも…美依は言ったのだ。
『行かないで、光秀さん』と。