〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第22章 艶熱蝶々-視線の鎖- ❀明智光秀❀
「笑わねぇよ。うまい飯を食って、笑顔になる大切さが解ったようだな、光秀」
「まぁ、そんな所だ」
「でも、それは美依限定か?どうなんだ、光秀」
「五月蝿い、夕刻前に城の台所で待ち合わせだ」
「はいはい、解った、成程なぁ」
「……美依の部屋に戻るぞ」
勘のいい政宗に、俺の心中まで覗かれた気がしたが、ひとまずそれは置いておく。
美依に美味い飯を作って、食わせて。
『美味しい、ありがとうございます』
あの笑顔を絶対見る。
あの笑顔を、俺だけに向けさせる。
俺はそう決心して、美依の部屋に戻った。
まぁ、一筋縄ではいかないだろうが。
確信的にそれも感じたのは、政宗には内緒である。
────…………
「いいか、煮立ったら味噌を溶いて入れるんだ」
「こうか?」
「杓子でぼとっと落として溶ける訳ねぇだろ!ああ、こっちは俺がやるから、お前はネギを切れ、細かくな」
「こうか?」
「……お前、そんなぶつ切りのどこが細かいんだ?」
「これ以上細かくは無理だ」
「こうやるんだよ、こうっ!」
その日の夕刻。
俺と政宗は城の台所に立ち、すったもんだやっていた。
政宗の教え方は荒っぽい上に、雑だ。
『いい具合になったら卵を混ぜる』
『味噌の分量は適当、美味いと感じるくらい』
そんな教え方で、俺が解るはずも無い。
いい具合も悪い具合も、美味く感じる所も解る訳がない。
きちんと分量を教えろと言っても、『料理は感覚だ』などと曖昧な答えが出る。
料理とは、そんなにざっくばらんなものなのか。
繊細な味覚や感覚がないと出来ないのか。
そうは思っても、やると決めたからにはやる。
美依の笑顔が見たい。
これが絶対なのだから。
「何やってるんだ、二人は」
「台所に珍しい方がいらっしゃいますね」
「光秀にやらせたら、天下統一飯が出来るぞ」
途中で、秀吉や三成、信長様までが様子を見に来た。
俺が台所に立つのが、そんなに変か。
(変なのは自分が一番自覚しているぞ)
それでも、美依に笑って欲しい。
あの愛らしい笑顔を向けてほしい。
どれだけ惚れてしまったのか、自分でも馬鹿だと思うけれど。