〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第22章 艶熱蝶々-視線の鎖- ❀明智光秀❀
「顔を貸せって事は、ここじゃない方がいいんだろ?なら、さっさと済ますぞ」
政宗は颯爽と歩いて部屋を出ていく。
すると、美依は不思議そうな顔で首を傾げ、政宗を目で追ってから、俺を見た。
「……なんか仕事の話ですか?」
「まぁ、そんな所だ。大人しく食べて寝ていろ、風邪を引いたと言う事は馬鹿ではなかったらしい。風邪が酷くなったら、逆に馬鹿になるかもしれないからな」
「むっ…なんですか、それっ、もう……」
軽口で膨れっ面になる、美依の頬をつんとつつくと。
美依はますます、その頬を膨らました。
この表情をさせるのは、得意なんだがな。
そんな事を思いながら……
俺は政宗の後を追って部屋を出た。
────…………
「はぁ?料理を教えろ、だと?」
美依の部屋から、襖を隔てた廊下。
俺の申し出に、政宗は素っ頓狂な声を上げた。
まぁ、無理はない。
『味音痴』と城中で知れ渡っている俺が、料理を作りたいから教えろ、などと言ったのだから。
だが、俺は本気だ。
本気で飯を作り、美依に食わせてやろうと思った。
無論、それはあの笑顔を見たいからだが。
「美依の今夜の夕餉は俺が作る。絶対失敗しない料理を俺に教えろ」
「どーゆー風の吹き回しだよ…お前、味が解らないだろ、光秀」
「お前がきっちり分量さえ教えてくれれば、味見なんぞしなくとも美味い飯は作れる」
「だからってな…理由くらい言え、じゃないと教える気はねぇ」
「……」
俺は思わず口籠もる。
本当の理由を言えば、からかわれるかもしれない。
けれど、はぐらかせば、政宗は断固として教えないだろう。
嘘を言ったって見抜かれそうだ。
なら、正直に言う方が合理的で手っ取り早いか。
「……美依の」
「美依の?」
「俺の飯が美味いと言う、笑顔が見たいだけだ」
「光秀……」
「笑うなら笑え、阿呆らしいと」
腕を組み、明後日の方を向いて目を瞑る。
これで駄目なら、全部ごちゃ混ぜに丼に盛った『天下統一飯』でも作るしかない。
そう思っていると、政宗は横から肩を抱いてきて。
にやりと笑って、顔を覗き込んできた。