〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第20章 猫さんと曇天の銀杏の木 ❀ 石田三成 ❀
「あれ……なんか騒がしいですね?」
髪や着物を濡らしながら城へ到着してみると。
女中さん達がぱたぱたと足音を立てて、廊下を走って行くのが解った。
どことなく騒然とした空気。
こんなに走ったら、秀吉様に叱られそうだな。
そんな風に思い、思わず一人に声を掛ける。
「すみません、何かありましたか?」
「ああ、三成様!丁度いい所に!」
「え、どうしました?」
「お待ちしておりました、とにかく庭に来て下さいませんか?!」
焦った口調でそれだけ言うと、また走って行ってしまう。
何かあったのだろうか?
丁度いい所にって、お待ちしておりましたって。
猫さんを探しに行ってる間に、何かあったんだろうか。
少し不安に駆られ、庭へと足を向ける。
そのまま早足で庭に向かってみると……
秀吉様と、女中さん達が三、四人。
木の上を見上げて、何やら言い合いをしていた。
「秀吉様、どうかなさいましたか?」
廊下から庭に降りて、秀吉様に声を掛ける。
すると、秀吉様は私に気が付き、何故か垂れた目を鋭く釣り上げて……
そして、肩をがしっと掴んできた。
「三成!お前どこに行ってたんだ?!」
「どこにって……」
「とにかく美依を止めてくれ!危なっかしいったらありゃしない!」
「え、美依様?」
秀吉様に促され、庭にある中で一番大きな銀杏の木に目を向ける。
上の方に視線をやった途端。
その木にしがみつく愛しい恋人の姿を発見して、思わず素っ頓狂な声を上げた。
「美依、様……?!」
美依様はそれはそれは高い所の幹にしがみつき。
そして、一生懸命に手を伸ばしていた。
その手を伸ばした先を見ると。
そこには、今まで私が散々探した……
艶やかな灰色の毛並みをした猫が、震えてうずくまっている。
「あれ、猫さん?!」
「やっぱりお前の猫か、三成。美依はな、木から猫が降りられなくなっているから助けると、女中の止める言葉も聞かずに、勝手に登って行ったらしい」
「えっ…」
「雨も降ってきたし、滑って落ちたりしたら……」
秀吉様は額に手を当て、呆れた表情。
それを見て、私も思わず眉をひそめてしまった。