〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第20章 猫さんと曇天の銀杏の木 ❀ 石田三成 ❀
「美依…もう一度、抱いてもいいですか…?」
「三成、君っ…あっ……」
「優しくします、とろとろに蕩かして差し上げますから…お願い、また可愛く乱れてくださいね?」
「んっっ…やっ、ぁあっ……!」
────そして、今宵も飽きる事無く溺れてく
美依様を愛して、蕩かして。
空が霞み始めても、啼き声は止まず…
いえ、私が止ませないだけなのだけど。
その時はあまり気にも止めなかった『猫さん』。
まさか、その『猫さん』に関して、
あんな『珍騒動』が起きるとは。
褥で愛し合う私達は、その時気づきもしなかったのだ。
────…………
(……ここにも居ませんね)
それから、数日。
私は『猫さん』が行きそうな所を、公務の間を縫って探し歩いた。
御殿の軒下。
座布団が重なっている所。
たまにつまみ食いをするので台所も。
少し探せば、すぐに見つかるだろうと思った。
しかし……
あの艶々な灰色の毛並みは、どこにも見当たらない。
普段気にも止めていなかったが、『猫さん』は一体どこから来ていたんだろう。
「これだけ探して居ないとなると…あの猫さんはどこか別の家の飼い猫だったんでしょうか」
そもそもが自分の飼い猫ではない。
気がついたら側に居たから、もうすでに飼っている気になっていたけれど……
だって、名前すら付けていない。
『猫さん』は『猫さん』だ。
今思えば、名前くらい付けてあげれば良かったか。
だって、人に尋ねて探す事が出来ない。
『猫さん、知りませんか?』なんて聞いて歩いたら、馬鹿だと思われてしまう。
それを思うと『猫さん』について、何も知らないんだなと。
若干、気持ちが沈んだ。
「今日も諦めますか……もう暗くなって来ましたし、叱られてしまいますね」
『猫さん捜索』を中断して、その足で城へと向かう。
公務を抜け出し探しに出てしまったから、もしかしたら秀吉様辺りが私を探しているかもしれない。
そう思って、少し早足で向かっていると……
ぽつりぽつりと頭上から雫が落ち始めた。
見上げれば、鉛色の曇天。
冬の冷たい雨が、次から次へと降り注ぎ、肩の辺りをしっとりと濡らしていった。