〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第2章 蜜毒パラドックス《後編》❀豊臣秀吉❀
(ああ、そうか。それも説明してやらないと……)
肩口から顔を上げ、ぼんやり考える。
美依は聞かれたと思っているのだ。
情事の時の、濡れた可愛い声を。
「大丈夫だ、聞かれてないぞ」
「……え?」
そこで、ようやく美依はこちらに振り返った。
暗い中でも解る、赤くなった頬に、泣き腫らした瞳。
その痛そうなまぶたに一回口づけ……
まだ熱を持つ美依の頬を優しく撫でながら、先ほど光秀が説明した事を、そのまま説明する。
光秀の想いまでは、伝えないけれど。
すると、美依は金魚のように口をパクパクさせ……
安心したようにため息をついた。
「なんだ、そうだったんだぁ……もう、光秀さんにしてやられたよ」
「え?」
「いつもの光秀さんの意地悪で、部屋の前でさも捕まえたような事を言ったんでしょ?もう……後で文句言わなきゃ」
(……美依の解釈だと、そうなっちまうのか)
これでは光秀が全て悪者になってしまう。
美依がこの事を問い正せば、光秀はその通りだといつものように笑うだろう。
あいつは……そーゆー男だ。
「いや…光秀には、感謝しないと」
「え?」
「きっかけはどうであれ、あいつは美依に気持ちを伝える機会をくれたからな。今日の事が無きゃ、俺はお前とこうはなっていなかったし、それに……」
「それに?」
「……いや、なんでもない」
『光秀もお前を想ってる』
それを言いかけて、押しとどまった。
これは、自分が伝える事じゃない。
光秀は光秀なりに、美依へ想いを伝えるだろうから。
今度はその機会は俺が作ってやろう。
せめてもの罪滅ぼしに、そう心に思った。
「……嫌いなんて言って、ごめんなさい」
すると、美依はきゅっと胸元に顔を埋め。
申し訳なさそうに言ってきた。
その背中に腕を回し、ぎゅっと引き寄せる。
まだ抱かれた名残があるのか……
美依の身体は芯から熱を帯びていて。
その柔い温度の体温を感じるたびに。
それに比例して、自らの体温も高くなっていく。