〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第2章 蜜毒パラドックス《後編》❀豊臣秀吉❀
「……俺はお前を抱いた事は謝らない。それを謝ったら、お前への気持ちまで嘘だと言ってる事になる」
「……」
「お前を抱いたきっかけは、確かに大名をはめる為の策だった。演技をして…適度にお前を啼かせる予定だった、でも……お前は可愛すぎた」
『私も秀吉さんが好き、秀吉さんの子供を産みたい』
美依が言った言葉は、策だとかそんなものはあっさり越えて、自分を情欲に溺れさせた。
可愛くて、この手で気持ち良くしてやりたくて。
誰が聞いているとか、そんな事はどうでも良かった。
ただ……ひたすらに、美依を愛したかった。
「気持ちが通じ合ってたと解った瞬間、全てをかなぐり捨てた自分が居た。お前が可愛く啼くたびに、馬鹿みたいに溺れていって…自分で自分が制御出来ずに、お前に注いだ。実際、障子の外から光秀の声が聞こえるまで、策なんて事、すっかり忘れてたくらいだ」
言い訳がましいと自分でも思う。
それでも、言わせてくれ。
信じられないなら、それでもいい。
心の本音を、矛盾でもなんでも。
美依を好きだという現実。
────それは、変えようのない事実なのだから
「美依、お前を愛してる。どうしようもないくらい…お前に惚れてる。お前に伝えた言葉は演技でもなんでもない、ずっと心にあった本音だった。だから、嫌いなんて言うな。俺を本当に嫌いでも…嫌いなんて、言うな……!」
馬鹿なほどみっともない。
美依の肩に顔を埋め、伝えようとした言葉は。
全て自分勝手で、美依の事なんて考えていない。
なのに、伝えずにはいられなかった。
美依を愛してる。
馬鹿みたいに愛してる。
許してはもらえなくとも、それでも。
止めどなく溢れ出す想いは苦しくて……
いつしか目頭には熱い涙が浮かんでいた。
「……」
美依は静かにそれを聞いていて。
今、何を考えているのかはさっぱり解らなかった。
暫し沈黙の時間が流れて───…………
やがて、美依が回した腕に触れながら、掠れた声で呟いた。
「……でも、許す事は出来ないよ。だって聞かれちゃったの、あんなみっともない声。秀吉さんにしか聞いて欲しくない声を、他の男の人に……」