〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第20章 猫さんと曇天の銀杏の木 ❀ 石田三成 ❀
「猫さん……」
「え?」
「最近猫さんの姿を見ていないなぁと思いまして。前は夜になると、勝手に褥に入って来ていましたから」
美依様と恋仲になり、愛しい恋人が頻繁に泊まりに来るようになってから……
『猫さん』の姿をめっきり見なくなった気がする。
もしかして、褥に丸くなる所が無くなったから、来なくなったのか。
それとも、猫なりに気を遣っているのだろうか。
まぁ、元々飼い猫ではなかったけれど……
それでも、来なくなるのは少し寂しい。
そんな事を思っていると、胸にくっついている美依様が目線を上げ。
そして、不安そうに尋ねてきた。
「もしかして、私が居るから来れなくなっちゃったのかな、猫さん」
「美依様……」
「本当は布団に入ってきたいのに、私が居るから…」
あまりに瞳が不安そうに揺れるので、私は安心させるように、その瞼にそっと口づけた。
そして、鼻先同士をくっつけるようにして、美依様に話しかける。
「そんな事はありません、大丈夫ですよ」
「でも……」
「猫は気まぐれですから、またひょっこり現れるでしょう。それに……」
「わぁ……」
体制を変え、ふわりと覆いかぶさり。
再度美依様を褥へと沈めると、美依様は小さく声を上げた。
やんわりと組み敷き、上から見下ろす。
美依様は見上げながら、少し瞳を潤ませ……
まるで『再度熱をください』と煽っているようにも見えてしまう。
「もし猫さんがそうだとしても、ごめんなさい。私は美依様を離せません」
「三成君……」
「猫さんも大事ですが、私には貴女をこうして愛する方が大事です」
「んっっ……」
そのまま首筋にかぷりと噛み付く。
美依様が儚い吐息を漏らし、それが合図のように、冷めかけた熱が再度加熱し始めた。
(……駄目な男ですね、私は)
手が無意識に美依様の身体を這っていく。
滑らかな手触り、柔い温もり。
溺れてしまったそれは、もう中毒のように……
私を冒して離さない。
だから、愛したい。
何度も、何度でも。
熱を分け合って、この身に実感したい。