〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第19章 桃色微熱 -戯れと煽る蜜- ❀豊臣秀吉❀
「お粥作ってきたから、食べさせてあげるね」
「そこまでしなくて大丈夫だ、自分で食える」
「いいの、やらせて!」
「んー…解った、なら頼む」
俺が褥から起き上がると、美依は褥の横に置いた盆の鍋の蓋を開けた。
ほこほこと湯気が上がる中、小さな椀に粥を盛り…
そして杓子に掬うと、ふうふうと息を掛けて冷ます。
その横顔が、何とも言えずに可愛くて。
思わずくすっと笑いが零れると、美依は不思議そうに首を傾げた。
「どうしたの?」
「いや、何でもない」
「じゃあ、口開けて、あーん」
そのまま、ゆっくり粥が口に運ばれる。
すこし塩気のある、優しい風味の卵粥。
それは怠い身体にじんわり染みて、心も身体も温めた。
「ん…美味いな」
「本当?良かった、でも秀吉さん…本当にごめんね」
「なんでお前が謝るんだ」
「秀吉さんが訪ねて来た時、部屋に居なくて」
「仕方ないだろ、お前だって用事くらいある。仕事もしてるしな」
「でも帰って来た時、びっくりしちゃった。秀吉さんは倒れてるし、着物は畳に落ちてるし、何があったかと心配したよ」
(……まさか、着物使って自慰したなんて言えないしな)
心の中に罪悪感が残るものの。
やはりみっともない姿は晒せないなんて。
変な自尊心が邪魔してる気がする。
そんな事を考えていると。
褥に座った俺に、美依がぴったりと身体をくっつけてきて……
そして、肩に頭をもたれ掛けてきた。
「ねぇ、秀吉さん」
「ん?」
「私、もう秀吉さんと喧嘩しないように気をつける」
「また、いきなりどうして」
「私…秀吉さんと離れていると寂しくて寂しくて…本当に耐えられないくらい寂しかった。だから…もう秀吉さんを怒らせないように気をつける」
(美依……)
それは俺も同じだ。
だから、馬鹿みたいに自慰するなんて行動に走った訳で……
そう考えた時。
ある事が、ふと頭に過ぎった。
もしかしたら美依も触れてもらえずに、色々我慢していたのではないか。
もしかしたら…
自分自身で慰めたりしていたのではないか。
美依だって大人の女なんだし。
そんな風にさみしさを紛らわす時だって、あるかもしれない。