〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第2章 蜜毒パラドックス《後編》❀豊臣秀吉❀
(光秀の奴………)
どこまで自己犠牲をする気だろう。
あいつは、自分を大切にしない。
織田軍のため、美依のため。
何かの予防線なのか、それは解らない。
でも……
光秀を残し、美依を探そうと部屋を後にした時。
こう言った光秀は、真面目だった。
『美依はお前に良く似合う……あいつは陽の下で笑って居なければ。俺にはそれをしてやれない。秀吉、お前ならあいつを太陽の下で笑顔にしてやれるだろう?』
いつでも裏で動き、汚れ仕事を買って出る光秀。
いつも不敵な笑みを浮かべ、腹が解らない信長様の腹心。
そんな光秀が漏らした本音。
────きっと、美依をとても愛していたのだと
そう思った。
でも、美依を譲ってやるほど寛大ではないけれど。
「美依、居るか……?」
美依の部屋の前で声を掛ける。
しかし、部屋からは返事がない。
灯りも灯っていないようだし……
少し遠慮がちに、すーっと部屋の襖障子を開く。
すると……
行燈も灯ってない真っ暗な部屋で、美依は小さく膝を抱えてうずくまっていた。
その小さな背中は微かに震え……
一瞬声を掛けるのが躊躇われたが、それでも。
「美依……」
そっと近づき、その身体を背中から抱き締めた。
美依は振り払いもせず、拒む事もせず。
でも……当然ながら許してもいないようだった。
「……離して、秀吉さん」
「美依、ごめん……」
「謝ったって知らない、謝るって事は嘘だったって認めたって事でしょう?なら、もう知らない、秀吉さんなんて大嫌い」
『大嫌い』
二回目でも、その言葉はかなり辛い。
美依を傷つけた、それでも……
美依が焚き付けた熱は鎮まってはくれない。
────『すき』が溢れて、止まらない
抱き締める腕に、ぐっと力を込める。
そして……
「嫌いなんて、言うな……!」
引きちぎれそうな心から、なんとか声を絞り出した。