〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第19章 桃色微熱 -戯れと煽る蜜- ❀豊臣秀吉❀
その時俺は、安直に。
次に会ったら謝って仲直りしよう。
そんな風に考えていた。
しかし、今思えば。
その美依に会った日も、忙しい公務の間に無理くり時間を作ったようなものだった。
簡単に『次に会ったら』なんて。
何故そんな風に思えたのだろう。
美依と喧嘩すると言う事が。
どれだけ大打撃だったのか、知る由もなく……
────…………
(……早く、仲直りしないとな)
────十日後、安土城書庫。
俺は文献から探し物をしながら、頭の中で美依の事ばかりを考えていた。
あれから、美依とは一切口を聞いていない。
まず、向こうが避けているし、その上最近激務だし。
公務に追われて、美依に会いに行く暇もない。
会えない、それはつまり。
美依には触れられないと言う事で。
当然ながら、身体を重ねる営みなども無い。
「秀吉様」
その時。
書庫の入口から、三成が少し慌てた様子で入ってきた。
相変わらずの、寝癖がついた髪の毛。
三成は素材がいいから、こういうズボラさが本当に目に付く。
もう少し身なりを整えたら、町娘達からもっと黄色い声が上がりそうだ。
「どうした、三成」
「最近の雨で地盤が緩み、兵糧の輸送に使っている道が土砂被害に遭ったと」
「それはまずいな、すぐに対処する」
「はい、それから大名の謁見なんですが……」
三成の口から、次々にやるべき公務が告げられる。
それを聞き、俺は内心ため息をついた。
今日も美依に会いに行けない。
つまり、仲直りが出来ない。
しかし、小さな事の積み重ねで、険しい天下統一の道も開けるというものだ。
そう自分に言い聞かせるしかない。
「あれ、秀吉様。少し顔が赤いようですが、具合悪いですか?」
一通り話が終わった所で。
三成がこちらの違和感に気がついたように、首を傾げた。
顔が赤い。
そう言われ、顔や首筋に手を当てる。
言われてみれば、少し火照っている気がする。
と、言っても身体が怠い訳ではない。
少し体温が上がっているだけだろう。
俺は三成を安心させるように、いつも通りの笑みを浮かべて言った。