〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第19章 桃色微熱 -戯れと煽る蜜- ❀豊臣秀吉❀
「秀吉さんなんか……もう知らないよ!」
美依が赤い涙目で、こちらをきっと睨む。
俺は今にも泣きそうな美依にびっくりし、なんとかなだめようと……
その赤くなった目元に指を当てたが、勢いよく振り払われてしまった。
「美依……」
「秀吉さんは、秀吉さんは…私を信用してないから、そんな事言うんだよ!私と政宗は、そんな関係じゃないのに…」
「俺はそんな事、言ってないだろ?!」
「言ってるも同然じゃない!」
「美依っ!」
部屋を出ていこうとする美依を必死に止める。
こんな筈じゃなかった。
ちょっとしたヤキモチで美依に言っただけだった。
しかし……
美依は違う風に捉えたらしい。
襖を勢いよく開けた美依の肩を掴み、こちらに振り向かせると。
真っ赤な瞳から、ポロリと。
透明の涙が一雫、零れ落ちた。
「美依……」
「秀吉さんなんか……知らないっ!」
「美依、待てっ……」
その涙に怯んだ一瞬の隙に、美依は掴んだ手を振り払って、ぱたぱたと走って行ってしまった。
俺とした事が、泣かせるなんて。
美依に、あんな顔をさせるなんて──……
(くっそ…俺、馬鹿だ……)
振り払われた手が熱い。
まだ美依の温もりが残る、その掌を。
俺はぐっと握りしめ、大きな後悔のため息をついた。
美依と恋仲になって、初めて喧嘩をした。
きっかけは、ほんの些細な事だった。
政宗の所へ料理を習いに行った。
それを美依から聞いたのは、既に習いに行った後で。
俺としては、習いに行く前に話して欲しかった。
別に、政宗と美依の仲を疑った訳じゃない。
ただ……他の男と二人きりになったのが気に食わなかっただけで。
だから、正直に言った。
『なんでそれ、前もって話さなかったんだ?』
『他の男と二人きりになるな』
単なる、小さな嫉妬だった。
だが、美依は自分が信用されてないと思ったらしい。
変な風に仲を疑われた、と。
馬鹿みたいな嫉妬が、大きな喧嘩に発展した。
本当に…自分が情けなく馬鹿だと思うしかない。