〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第17章 櫻花に夢見し君想ふ ❀織田信長❀
「くくっ…見事に引いたな、貴様」
「笑い事じゃないです!新年早々…トホホ」
「そこまで落胆する事か?」
「なんか、幸先悪いと言うか……」
そう言って、がっくり肩を落とす美依。
美依は笑顔になったり、落ち込んだり。
本当に表情がくるくる変わって忙しい。
それは本当に見ていて飽きないのも本音だが……
でも、あまりに落胆する様子は、見ていて心苦しいと言うか。
(全く、世話の焼ける……どこまでも愛らしい奴だ)
「籤を貸せ」
「あっ……!」
美依の手から、籤をひょいと取り上げる。
美依にこんなものに振り回されるな、と言い聞かせても無駄だろう。
かと言って、取り替える訳にもいかないし、もう一度引いて凶が出ないとも限らない。
ならば……『こう』すれば良い。
「信長様……?」
美依が不思議そうに首を傾げる中。
自分の引いた籤で、美依の籤を包んだ。
そして、そのまま枝に括りつける。
その時、柔らかな風が吹いて……
籤を結んだ枝を静かに、しなやかに揺らした。
「貴様の今年の『凶』はこれで俺のものだ」
「え……?」
「貴様の凶は、俺の大吉で包んでやる。はなから俺は貴様を守る為の存在だ、こうすれば…俺が盾になって、災厄からも守れる」
「信長様……」
「不満か?」
美依は目を見張って……
やがて、またくしゃっと表情を歪めた。
しかし、先程のような暗い表情ではなく……
小さく口元には笑みを浮かべ、目も赤く潤んでいた。
「不満なわけ、ないじゃないですかっ…!」
「そうか、なら良い」
「信長様のせいで、今日は涙腺緩みっぱなしです」
「あまり泣くな、新年早々腫れるぞ?」
「なら、泣かせた責任取ってください!」
「そうだな、では……」
「ひゃっ……!」
ふわりと美依を横抱きにすると、美依は素っ頓狂な声を上げた。
責任を取れ、そう言うならば……
愛でて愛でて、愛で尽くすくらいしか思いつかない。
それに、美依の『姫始め』をまだしていない。
これからもたっぷり愛されると言うならば……
まず年の初めに、教え込まねばなるまい。
何が不可欠かと言う事を。