〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第17章 櫻花に夢見し君想ふ ❀織田信長❀
「……貴様は、俺のたった一人の妻だろう?」
────ザァッ…!!
その時、一陣の風が吹き……
側にある寒桜の枝を揺らした。
舞い上がり、舞い上がる、薄紅の花弁。
儚くも、強くて美しい。
寒い人々の心を温める……一片の拠り所。
それはきっと──……
俺にとっては、『美依』そのものなのだ。
「未知なる事を解ろうとする心を、妨げたりはしない。俺の傍に居るならば…解らない事は幾らでも説明してやる。貴様は申した、妻なのだから話せば解ると」
「信長様……」
「俺達は個々の人間だ、完璧に解り合うのは不可能だろう。しかし…解り合おうと努力する事で、完璧に近づく事は出来る」
「……っっ」
美依の艶やかな髪に触れ、付いた花弁をそっと取る。
そのまま頬に手を滑らせれば、柔い温もりが痺れる程に伝わった。
「貴様は俺の最大の未知なる者だ、美依。しかし、それは何より愛しい存在だ。解らぬ事があれば、俺も貴様に尋ねる。そして知ろうと努力する。それは自然で当たり前の事だ、だから貴様が相応しくない訳ではない。貴様以上に…俺に相応しい相手は居ない。貴様は、俺にとっての拠り所だ、美しく咲く…寒桜のように」
運命的に出会い、惹かれ合い。
そして、一生を添い遂げようと…
それはある意味、俺にとっては未知なる挑戦だった。
しかし、美依とならば……
心の拠り所が傍に居るならば、きっと無謀でも何でもない。
手を繋ぎ、生きていけると。
何度年が過ぎ去ろうと、確信出来る。
「信長、様っ……」
すると、美依の純粋過ぎる瞳に、涙の膜が張った。
そのままにしたら、零れてしまう。
そう思い、そっと瞼に口づける。
しかし、それはあまり役には立たなかったようで。
美依が瞬きをすると、つーっと一筋の雫が、頬を伝って流れていった。
「私、ずっと思っていました。表舞台で役に立てないのなら、せめて信長様がそこから降りた時に、受け止められるように腕を広げていたいって」
「美依…」
「信長様が私を拠り所にしてくれるなら、私はずっと傍にいます。信長様の為に、頑張って咲いています」
そう言った美依は…
やっと、美しく笑んだ。