〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第17章 櫻花に夢見し君想ふ ❀織田信長❀
「まったく、貴様と言う女は……」
思わず苦笑し、美依の頬を撫でる。
そして、その雫が零れ落ちる前に、そっと目元を拭うと……
そっと美依の手を握りしめた。
解らないと言うなら、話してやるしかあるまい。
それは決して美依が出来が悪いと言う意味では無いが……
それも、きちんと誤解を解いてやらねば。
「境内を散歩しながら話してやる。神籤(みくじ)もあるらしいから、引きに行くとしよう」
そう言って、そのまま美依の手を引き歩き始めた。
美依は俯いたまま大人しく付いてきて……
それがまた遠慮がちなのが、先程の言葉が本心なのだと証明している。
『信長様には相応しくないのでは』
何故、そんな事を思うのだろう。
愛する女は、美依……たった一人だけだと言うのに。
本当に美依は…手の掛かる愛らしい奴だ。
新春の神宮。
中に入って見れば、新年の参拝に訪れる者達で賑わっている。
寒桜も寒さに耐え、花を咲かせ……
厳しい寒さの中でも、それはとても心を温めた。
強いて言えば、きっと『遷宮』とは、寒桜のようなものなのだと思う。
それを、どう上手く美依に説明するか。
頭の中で言葉を選び…そして口を開いた。
「美依、天下統一の為にまとめ上げる事と言えば、勿論土地や、世の仕組みや、その様な政であるわけだが…その他に、政と並んでまとめ上げねばならない、大切なことがある。それは何か、貴様には解るか」
すると、美依は足を止め、首を可愛らしく傾げて……
そのまま無言で首を横に振った。
「そうか、では国の宝は何だか解るか、美依」
「国の宝は、そこに住む人達です」
「そうだ、それは解っているようだな。民が活気がある国は、国全体が活気がある。民が潤えば国も潤う」
「それと何か関係が?」
「……今は乱世で、人の心も荒んでいる。そんな荒むに荒んだ世の民の心をまとめ上げ、一つに統一する事も…世を大平するには重要な事だ。そのために、俺は巨費を投じた」
「え……?」
美依が不思議そうに見上げてくる。
まだ理解には遠いという表情、なので、さらに噛み砕いて説明する。