〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第2章 蜜毒パラドックス《後編》❀豊臣秀吉❀
「全て…大名をはめる罠だったんだ」
「え……?」
「俺達の情事の声を聞かせ、そして…それに油断した所を捕らえる、全部…大名を捕まえる為の、策だったんだ……」
美依の目が、これ以上無いと言うくらい、大きく見開かれる。
その言葉を理解したのか。
次第に見開かれた瞳には涙が溜まっていき……
次の瞬間。
腕を振りほどいた美依は、その小さな手のひらを思いっきりこちらの頬に叩き付けた。
パシンッと言う音と共に、頬に痛みが走る。
美依の方を見てみれば、美依は唇を噛み締め。
頬には黒真珠の瞳から零れた涙が伝い、拭おうと伸ばした指は、勢いよく振り払われた。
「…全部、嘘だったの?愛してるって言ってくれた事も、こうして抱いてくれた事も……!」
「美依、それは違う…!」
「違わないよ!だって、はめる罠だったんでしょう……!?罠を張るために、嘘をついて私を抱いたんでしょ!?子どもを産んでくれとか…それも、全部全部……!」
「美依……っっ!」
美依は身体を押しのけ立ち上がると、乱れた襦袢の前を掻き合せ……
心底傷ついたと言う顔で、言葉を放った。
「秀吉さんの、嘘つき!大っ嫌い──………!!」
「……っっ!美依、待て!」
そのまま部屋を出ようと駆け出した美依の後を追う。
美依は障子を開け、そのまま部屋を出ようとして……
部屋の外に居る『何か』に一回怯んだが、迷わず廊下を駆け出した。
「美依っ……!」
腕を伸ばしたが間に合わず、駆け出した美依の姿は、だんだん小さくなり。
呆然としている間に、その姿は見えなくなってしまった。
なんて、馬鹿な事をしたんだろう。
額の頭をくしゃりと掻きながら、後悔ばかりがつのる。
美依の気持ちを聞いて、欲のままに暴走した己の愚かさ。
そもそも、こんな策を取った時点で全てが間違っていたのだ。
「嘘つき、か……お前には似合わない言葉だな、秀吉」
乾いた笑いと共に、呆れたような声が掛かる。
その美依が怯んだ『何か』、声の主に視線を向けながら……
げんなりとして、それに答えた。