〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第16章 SEKIRARA ー秘密の言葉はお前の為にー❀明智光秀❀
(正面から行くか、それとも……)
頭の中で、最善の策を練る。
勿論、妻子の様子を見に来たと言う正当な理由なので、正面突破しても問題は無いのだが……
だが、もし。
それで、見たくないものを見てしまったら?
そう考えると、足が竦む。
美依を信じていない訳ではないが、でも。
最悪の事態は、頭に入れておいた方が動揺しなくて済む。
(……自分自身が呆れるな、惚れた弱味と言う奴か)
そんな事を悶々と考えていると。
急に背後から、トントンと肩を叩かれた。
「光秀、なんだお前、来てたのか?」
内心ドキリとして振り向くと……
不敵な青い瞳と視線がかち合った。
それを見て、安堵のため息が漏れる。
そんな自分にさらに呆れながらも。
その『不敵な青い瞳の人物』に冷静を装って話しかけた。
「なんだ、政宗。お前も秀吉に用か」
「俺はどちらかと言うと、美依と花月だな。ここに居るって言うから差し入れを持ってきた、お前は秀吉に用事なのか?」
「いや、まぁ、そうだな……」
思わず返事を濁す。
すると、政宗は何か勘づいたように、肩に腕を回してきて。
ニヤリとまた口角を上げて、核心を突いてきた。
「美依と仲直りでもしに来たか、光秀。喧嘩したんだって?城内はその話で持ち切りだぞ、仲睦まじい二人がここ数日一緒に居ないって」
図星を突かれて、ぐうの音も出ない。
仲直りと言うか、結局は自分の不安を晴らしたいだけなのだけど。
そう思い、思い切って政宗に数日前の一部始終を打ち明けた。
すると、政宗はキョトンと目を見開き。
すぐさま豪快に笑い出した。
「……何が可笑しい、政宗」
「いや、お前は本当に美依に愛されてんなと思って。光秀変わったな、親馬鹿で美依馬鹿だな」
「五月蝿い、こっちは心配してるんだ」
「なら、直接確かめに行こうぜ、ほら」
政宗が肩に腕を回したまま、御殿へと足を踏み入れる。
引きずられるようにして足を運んだが、しかし。
躊躇いがあって、前を向けない。
すこし困惑気味に政宗の顔を見ると……
政宗はあっけらかんとして清々しい表情だった。