〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第16章 SEKIRARA ー秘密の言葉はお前の為にー❀明智光秀❀
「美依……」
「光秀さんは、私の事を信じていないんですか?」
「俺は誰よりもお前を信じている」
「嘘、信じてないからそんな事を言うんですよ!」
美依は声を荒げ、そして。
ぐいっと肩を押して、腕から抜け出した。
そのまま、酷く傷ついたように…
こう言い放って、花月の方へ走って行った。
「光秀さんなんか、知りませんっ……!」
美依と夫婦になって初めて。
まともに喧嘩をした、昼下がりだった。
────…………
『光秀様、機嫌良さそうですね』
どこに行っても、何をしていても。
美依と花月と居れば、そう言われていた。
気が付かないうちに、心からの笑みを漏らし…
いつしか作り笑いが己の性格だった事も忘れ、二人を見守る視線が優しくなっていたのは気づいていた。
そのくらい、美依と花月は大事で。
自分の手で、何者からも守ってやりたいと……
それだけが、自分で決めた心の一本槍として、全てを突き動かす原動力になっていた。
なのに、あんな……
あんな顔を、させるなんて。
『光秀さんなんか、知りませんっ……!』
俺が、美依を傷つけたのか?
何よりも誰よりも信じていると言いながら。
俺は美依を疑って。
あんな風に、泣かせて。
泣き顔なんて、絶対に見たくなかったのに──……
(……何をやっているんだ、俺は)
公務を終えた、夕刻。
光秀は秀吉の御殿を目の前にして、何度目かの大きなため息をついた。
美依と口を聞かなくなって数日。
その間、花月はいつも通りだったが、美依はあからさまにこちらを避け…
なんとなく重苦しい気持ちを抱えた日々を過ごした。
当然の如く、夜の営みなども無いまま。
美依を愛でられない事もまた、かなりの大打撃で。
触れられないもどかしさから……
火照る身体を持て余す、そんな日々に耐えかねて。
公務を迅速に終わらせ、秀吉の御殿に足を運んだ。
口を聞かない間も、美依と花月は秀吉の御殿に通っているようだった。
結局はこの目で確かめたい。
目で見るより、確かな事は無いからだ。