〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第16章 SEKIRARA ー秘密の言葉はお前の為にー❀明智光秀❀
「わぁ、光秀さんごめんなさい!こら花月、お父さんはお仕事中だよ?」
花月に続き、母美依が後に続いてやってきた。
美依は光秀にしがみついている花月の背中を優しく撫でる。
すると、それに気がついた花月は顔だけ振り返り、『母様』とまた表情を綻ばせた。
「今日は父様、一緒にごはん食べられるって!」
「そうだね、今日は秀吉のおじちゃんの所から早く帰って来ようね」
(……今日も行くのか)
ふふっと微笑む美依を見て、光秀は思わず目を細める。
ここのとこ、毎日。
美依と花月は秀吉の御殿へ出掛ける。
勿論、こっちの帰る時間に合わせて帰っては来るが、たまに遅くなって夕餉を秀吉の御殿で食べてきたり。
花月も一緒な訳だし、美依と秀吉の間に何かある訳ではないとは信じているが……
それでも、美依の口から他の男の名が出るのは、いい気分はしない。
それは夫婦になり、美依が自分のものになったとて、同じ事だ。
「秀吉の御殿には絶対行かなければ駄目なのか?すぐに終わらせるから、少し待てば一緒に帰れるぞ」
「んー、無理しなくて大丈夫ですよ。光秀さんが帰る頃には私達も帰りますから」
「つまりは行くんだな、どうしても」
「約束なので、ごめんなさい」
「いつも思うんだが、何をしに行くんだ?」
「えぇと……今は秘密です」
(……他の男と秘密の約束をするな)
思わず唇を噛む。
なんだ、このもやもやは、嫉妬しているのか。
なんだろう、ものすごく気に食わない。
立ち上がり、美依と花月を見下ろすと、どす黒い感情が芽生える。
自分の愛する嫁と、愛する娘と。
それは何よりかけがえのないもので、大切で。
だからこそ……秘密は絶対に駄目だ。
「……花月、少し向こうへ行っていろ。母様と大事な話がある」
花月を促すと、花月は『はーい』と言って、ぱたぱたと走り……
そして、廊下の先に姿を消した。
向こうには三成なりし誰か居るから、放っといても大丈夫だ。
今、肝心なのはこっち。
そう思い、美依を見つめる。
美依は不思議そうな顔で見上げてきて……
そして、可愛らしく首を傾げた。