〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第15章 胡蝶ノ蜜夢《後編》❀家康 × 三成❀
────廊下の奥から、走り寄ってくる音がする。
二人、いや三人。
話しながら、忙しなく足音が迫って。
「お客様、お辞めください!」
「いや、確かにこっちだ。居るんだろう、三人が」
「今、お取り込み中でして…」
「そんなのは知ってる、ああ…すっげぇいい匂いだ」
聞き覚えのある不敵な声と共に。
勢いよく、部屋の襖が開かれた。
その瞬間、美依を再度犯そうとしていた二人は、固まって開かれた襖に視線を注ぎ。
美依は襖を開けた人物の名前を、ぽつりと。
まるで、うわ言のように呟いた。
「政宗────…………」
その後。
宿に駆けつけた秀吉と光秀の手に寄って、美依はその快楽の地獄から抜け出した。
先に駆けつけた政宗はどうしたかって?
政宗の『快楽主義者』と言う性格。
それを踏まえて、想像にお任せしたい。
誘う匂いを漂わせた華。
それに囚われた蝶々達。
淫らな秘め事は、幸か不幸か、
美依の記憶に残る事は無かった。
家康と三成、政宗に至っても。
それは決して他言されることは無く、
何食わぬ顔で仲の悪い日常が戻り。
そして、問題の『誘う香水』
それが、どうなったかと言うと──……
「わぁ…家康、ありがとう!おいしそうな桃だね」
美依が褥の中で、ふにゃりと微笑む。
未だ体調の優れない美依を見舞った家康は、褥の傍に座り、柔らかな笑みを漏らした。
そして、布団を挟み反対側に座る三成を見て…
打って変わって冷ややかな視線を送る。
「三成…お前、毎日来るな。邪魔」
「私は美依様が退屈しないように、お話を読み聞かせに来て差し上げているんです」
「そうだよ、家康。今日はね、西洋の書簡なんだって。とっても興味深いよ」
美依が嬉しそうにニコニコと笑う。
そんな笑みに毒を抜かれ…
家康は『そう』とぶっきらぼうにも優しく呟いた。
「あ、この前は本当にごめんね、家康。私が落としちゃった書簡、政宗が届けてくれたんだって?」
「ああ、まぁね」
家康が曖昧に答えると、美依はしょんぼりし、本当に申し訳なさそうに眉をひそめる。