〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第14章 胡蝶ノ蜜夢《前編》❀家康 × 三成❀
「……あれ?」
小瓶の蓋を開け、手で扇ぐようにして香りを嗅いだ私は、思わず眉をしかめた。
ハッキリ言って、全然香りがしない。
嗅いでも嗅いでも、無臭である。
もしかして、香水では無かったのか?
そんな事を思ってみるが、見る限りでは、それ以外の何物でもないし……
思わず不思議になって、頭を捻る。
「……もしかして、肌に付けないと香らないとか?」
確か香水は体温で温めて、アルコールが蒸発すると香るとかなんとか……
そんな事をどこかで読んだ気がする。
そう思い、指先に少し取ると。
耳の後ろと、うなじ部分にぽんぽんと置くようにして塗ってみた。
しかし……
「全然香ってこない。なんで?」
おかしいなぁ…と思いつつ、首筋や手首。
それから胸元なんかにも付けてみる。
しかし、すぐに揮発してしまうのか、全然塗っている感じもしない。
やっぱり香水では無かったのか?
頭に疑問符ばかりが浮かぶ。
そんな事をしていた矢先──……
「あれ、美依様?」
明後日の方角から声を掛けられ、私は顔を上げた。
「あれ、美依様?」
三成は町中で美依の姿を見つけ、そばに駆け寄ると声を掛けた。
何か眉を寄せて俯いていた美依。
声を掛けると、その大きな瞳をこちらに向けてきて。
姿を確認した途端、その目元を緩めた。
「あ、三成君!」
「美依様どうしたんですか、こんな所で」
「三成君こそ」
「私はちょっと買い物に行った帰りで…美依様、怖い顔をしていらっしゃいましたが、何かありましたか?」
「え、怖い顔してた?」
「怖い顔と言うか、何か思い悩んでいるような」
美依の姿を発見した時。
何やら難しい顔をしていたので、それが気になる。
そう指摘すると、美依はまたしかめっ面になり。
手元に視線を落とした。
そして、うーんと唸りながら首を傾げる。
美依は片手に一冊の本を持ち、もう片手には何やら小さな小瓶が握られていて。
その小瓶の方を見ながら、何か悩んでいるようだった。