〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第14章 胡蝶ノ蜜夢《前編》❀家康 × 三成❀
「どれにしようかな……」
そして、私はいそいそと献上品の中から欲しいものを探す。
装飾品や小物類など、素敵なものが色々あり過ぎて、迷ってしまう。
と、何気なしに開けた小さな木箱。
その中に入っていた小さな小瓶に、私は興味を惹かれた。
「わ…可愛い瓶!香水かな、これ」
とても繊細な作りをしている、その小瓶は。
中に綺麗な薄黄色をした液体が入っており……
太陽にかざすと、それは宝石のようにキラキラ輝いた。
(綺麗だなぁ……)
思わず魅入っていると、それに気がついた信長様が私に近づいて。
手に持っている小瓶を、しげしげと覗き込んだ。
「ほう…西洋の香か。随分不思議な色をしている」
「とってもいい香りがしそうですよね。信長様、私これが欲しいです」
「気に入ったなら持っていけ、遣いは忘れるな」
「やった、ありがとうございます!」
こうして私はその小瓶を懐に仕舞い、おつかいの書簡を手に天主を後にした。
信長様もその時は気付いていなかった。
その『香水』がとても厄介なシロモノだと言う事に。
だけど、気がついた時には、もう遅い。
その香水に囚われてしまった後では。
もう、取り返しがつかなくなっていたのだ──……
────…………
「三成君、居なかったなぁ……」
早速おつかいに出向いた私は。
城から近い方の御殿、三成君を先に尋ねた。
しかし、三成君は留守で。
仕方ないので、女中さんに書簡を頼み……
その足で、家康の御殿に向かっていた。
まぁ、まだ陽も高いので、家康に書簡を渡したら、もう一回三成君の所に戻ってみてもいいかもしれない。
そんな事を考えながら歩いていると。
ふと、信長様にもらった香水の事が頭に過ぎった。
「……そーいや、まだ香りも確かめてなかった」
そう思い、一回足を止めて、懐に手を伸ばす。
手に当たった小瓶を、そのまま懐から取り出し。
一回、太陽の陽に透かした。
陽を浴びて輝く、琥珀色の液体。
どんないい香りがするんだろう…と期待を大きく膨らませながら。
私は、躊躇いも無く小瓶の蓋を開けた。