〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第12章 俺の恋人は藍玉の天使《後編》❀豊臣秀吉❀
元々秀吉さんとは、遠出で海に行くはずだった。
だから、海に行きたかったのかな。
その時、私はそのくらいにしか考えていなかった。
でも…
秀吉さんは違っていて。
それは今までの人生の中で、あった事がないくらい。
本当に幸せに満ちた『サプライズ』を用意していてくれた事。
秀吉さんのデートで浮かれすぎていた私は。
この時は、まだ知る由もなかった。
────…………
空が茜に染まった頃。
私達は目的の、海の見える公園に到着した。
遠くに水平線が見え、汽笛の音がなると…
大きな船がゆっくりと走り出し、それは次第に小さくなって、水平線の彼方に消えていく。
そんな風景を、私と秀吉さんは肩を並べて見ていた。
(秀吉さん、さっきから黙ったままだな)
秀吉さんの夕陽に染まった顔を伺い、ぼんやり思う。
秀吉さんの鳶色の髪は夕陽に染まり、赤くきらきらと光っていて…
ああ綺麗だな、なんて。
場違いみたいに思った。
そしてその深い琥珀の瞳には、何を映して居るのか。
海を見ているはずなのに…
何故か海は映っていない気がした。
「……美依」
やがて、私の視線に気がついたのか。
秀吉さんはゆっくり顔をこちらに向けてきた。
「今日はありがとな。なんか、すごい楽しかった」
「うん、私もとっても楽しかったよ」
「お前の生まれた世界が見られて…本当に良かった。俺はもう二度とこの景色は見られないだろうけど」
「私だって…そうだよ」
今日みたいな奇跡は、何度も起きる訳ない。
だから、また戦国時代に戻ったとしたら…
もうきっと、一生見れないなと思う。
すると、秀吉さんは私の肩に手を置き、身体をゆっくり自分の方に向かせると。
少し切なげを帯びた口調で問いかけてきた。
「お前は、それでいいのか?」
その問いに思わず目を見開く。
秀吉さんは何を言っているんだろう。
「秀吉さん…?」
「ここはお前の居た世界で、帰って来れたんだろう?お前は、ここで生きてくはずの人間だったのに、俺がそれを奪った」
「は、何言って…」
何を訳の解らない事を言っているのか。
すると、秀吉さんは唇を噛み締め、絞り出すように言った。