〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第12章 俺の恋人は藍玉の天使《後編》❀豊臣秀吉❀
「なんだ、美依。やっぱり似合わないか?」
「いや、全然!すっごく似合うよ、格好いいよ!」
「本当だな?しかし、こっちの着物はなんか窮屈だな…これが五百年後の主流の服か」
秀吉さんは着心地を確かめているのか、腕を上げたり、屈伸したり……
こんな格好いい人が、私の恋人なんて。
それに優しいし、男らしいし。
褒め言葉しか出ないのが、なんだかとっても誇らしかった。
「秀吉さん、格好いいな、さすが戦国武将」
佐助君まで、ぽろっとそんな事を漏らす。
男の人から見ても格好いい大人の人って素敵だな。
もはや惚気しかでない自分にも呆れるけれど。
「美依、お前も……」
「え?」
「その格好、良く似合ってるな。見違えた」
「ほ、本当に?」
「ああ、すごい可愛いよ」
全然飾らない、ストレートな言葉で褒められ、思わず頬が熱くなる。
秀吉さんに釣り合うなんて思っていないけれど…
それでも、秀吉さんだけでも可愛いと思ってくれるなら。
(……頑張っておしゃれした甲斐あったかな)
そう思って、私は思わず口元を緩めた。
その後、私達三人は一緒に家を出た。
佐助君も帰って、こちらに居る間に色々研究したいらしい。
佐助君に見送ってもらい、『今度は戦国時代で会おうね』と指切りをして約束し……
そして別れると、秀吉さんは私に手を差し出しながら言った。
「今日は武将だとか、本当は戦乱の世に居たとか…そんなのは忘れる」
「え?」
「今日だけは、お前を愛するこの時代の一人の男だ。そんなのも、たまにはいいだろ?」
「秀吉さん……」
思わず、きゅんと胸が声を上げる。
私は普通の恋人としてのクリスマスを過ごしたいと言ったから、秀吉さんは精一杯それを叶えようとしていてくれているんだと。
その気持ちが、ひしひしと伝わってきた。
秀吉さんだって、不安もあるだろうに。
こんなワケ解らない世界に飛ばされて、戸惑わないはずが無い。
私が戦国時代に行った当初がそうだったから。
でも……
秀吉さんは、それを見せると私が不安がるから。
きっと堪えてくれているんだ。
改めて秀吉さんの優しさと強さに惹かれて…
私は手を握り返し、精一杯の笑顔を見せた。