〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第11章 俺の恋人は藍玉の天使《前編》❀豊臣秀吉❀
「美依…」
すると秀吉さんは表情を曇らせ、きゅっと一回優しく抱き締めた。
そして、額に優しく口づけを落とし…
再度瞳を覗き込みながら、尋ねてきた。
「お前は…元の世界に帰りたいのか?」
(秀吉さん……)
その綺麗な瞳は、心配そうに揺れていて。
私は思わず、秀吉さんを安心させようと、その首元に腕を回し、自分の方に引き寄せた。
「違うよ、秀吉さん。そうじゃないよ」
「美依…」
「私はここで秀吉さんと生きていくって決めた。もう離れるなんて考えられないし……ずっとここに居る。だから安心して」
戦乱の世の中だからこそ…
愛する人を、もっと大事にしようと思えた。
きっと、儚くとも、それは最大限の命の煌めきで。
それは何より尊く、ただ無意味に生きる人生より、よっぽど素晴らしいと…私は思える。
すると、秀吉さんも抱き締める腕に力を込めてきて。
そのたくましい腕に、ほっとする感覚を覚えた。
そして、お互い顔を見合わせ…
短い口づけを交わし、お互いを安心させるように微笑み合った。
「そうだな、俺もお前をもう離せない。だから、傍に居てくれなきゃ困る」
「大丈夫、絶対離れないから。嫌だって言っても離さないよ」
「嫌だなんて一生思わないぞ、絶対」
「ふふっ、ありがとう」
今はまだ、恋人同士。
プロポーズもされていないし…宙ぶらりんと言えばそうなのかもしれない。
(早く…決定的な言葉が聞きたいな)
きっと信長様の天下統一の途中だし……
秀吉さんなりに考えている事があるんだと思う。
だから、今は待つしかない。
辛い時もあるけど、秀吉さんを信じてるから大丈夫。
「さて、もう寝るか。明日は遠出だし」
秀吉さんが毛布を掛け直してくれながら、穏やかな声で言う。
そう、明日は秀吉さんと逢瀬をする約束だ。
早出になるから、今日は御殿へ泊まらせてもらって。
『馬で遠出して、海を見に行こう』
秀吉さんからそう言われて、実は何日も前からずっと楽しみにしていた。
「うん、海に行くの楽しみ!寝れるかなぁ」
「おいおい、ちゃんと寝ろよ?」
「ふふっ、大丈夫。ねぇ秀吉さん」
私は目を瞑る寸前。
秀吉さんの目を見て、思わず想いを伝える。