〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第2章 蜜毒パラドックス《後編》❀豊臣秀吉❀
だからこそ、反対した。
美依のそんな姿は見せられない。
美依の乱れる姿、愛らしい声ですら……
他の男には晒せない。
だって。
(────俺は、美依を愛してるから)
妹として見られなくなってから、随分経つ。
美依の全てに、いつの間にか惹かれていた。
もう、女は美依しか目に入らないくらいに。
実際、襦袢姿を見た時や、宴で物欲しそうな瞳で見つめられた時だって。
自分が爆発し、美依を襲ってしまうんではないかと思ったくらいだ。
向こうが兄貴としか思っていなくても……
気持ちを殺す事など、出来なかった。
(でも、俺は信長様の右腕だから)
織田軍を仇なす輩は放って置くわけには行かない。
右腕である以上、それなりの働きをせねばならないし、美依と『偽り夫婦』を承知したのも織田軍の為だ。
だから、光秀の策にも乗った。
嫌でも、それが最高に有効だと思ったからだ。
それに情事を丸々見せる訳では無い。
障子越しに、声だけ聞かせればいい。
それなら、まだ幾分は救いがある。
光秀は信長様の左腕だ。
まさか、そんな場面を長々大名に聞かせるなど、そんな馬鹿な男じゃない。
こちらの声に気を取られた一瞬の隙を突いて、必ず捕らえる筈だ。
「ちょっ…秀吉、さんっ……!」
帯を解くのを再開すると、美依は再度声を上げた。
帯を解き、紐を緩め……
やがて掛下を剥いでしまうと、襦袢一枚になる。
薄い布地からは、美依の身体の線がはっきりと解り……
その細くも女らしい丸みのある身体付きに、身体が熱く疼いたのが解った。
(演技、演技なんだ、情事は演技……)
馬鹿みたいに心に言い聞かせる。
今にも吹っ飛びそうな理性を繋ぎ止めるように。
なんか、それっぽい台詞を言わねば。
もしかしたら、もう大名は聞いているかもしれない。
美依とは『夫婦』なのだから。
夫婦の情事の台詞を、聞かせなければ……
思考を限界まで働かせ、やがて美依を背ろから抱きすくめると。
その温かな身体を堪能しながら……
美依に精一杯の『演技』をする。