〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第2章 蜜毒パラドックス《後編》❀豊臣秀吉❀
「ぁっ…秀吉、さんっ……はぁ……っっ」
ちゅっ…ちゅぱっ……
唇が触れた部分から発せられる、儚い水音が響く。
細いうなじから首筋に沿って口づけ、舌を這わせると、美依は甘い吐息を漏らし始めた。
今まで一度も聞いたことがない、甘く艶のある声。
それは心の柔らかい部分を刺激し、身体に炎を焚き付けた。
「んっっ…美依……」
ぱさりっ──………
後ろから美依の打掛を脱がせる。
花柄の打掛の下には白い掛下。
その真っ白な着物を脱がす、それだけで何故か背徳感に襲われ、目眩がする。
しゅるっしゅるっと布擦れの音と共に、帯を少し乱暴に解いていくと……
美依は振り返って、泣きそうな声で訴えてきた。
「ひ、秀吉さん…待って、なんで……?!」
「……悪い、美依」
「それじゃ解らないよ、ちゃんとこんな事する、説明してっ……!」
「……」
思わず手を止め、押し黙る。
説明しても、多分理解はしても納得はしない。
それに、美依は『演技』が出来ない性格だ。
なら……言ってしまったら、意味が無い。
────先程、光秀は言った。
『俺にいい考えがある…耳を貸せ、秀吉』
『お前と美依の情事を、大名に見せつけろ』
────あの大名には、困った『性癖』がある。
『人の情事を見て、楽しむ事』
それは、安土城の信長や武将達の耳にも入っていた事だった。
遊郭に行き、わざと家来と遊女に目の前で情事をさせたり。
わざわざ城に武将夫婦を住まわせ、夜の営みをこっそりと覗いているなど……
大名の破廉恥な『性癖』は目に余るものだったと。
そんな性格に加え、信長に謀反を企てる行動。
『あいつは、もう要らぬ』
信長がそう判断した故に、今回の宴を執り成す事になった。
武士の恥晒しは要らない、逆らう者はもっと要らない。
それならば。
己の異常な淫欲のせいで我が身を滅ぼす。
そう言う意味では、光秀の『いい考え』は有効なのだろう。
しかし、それは理解出来ても納得行くものでは無い。
演技でも情事を見せるなんて……
女の美依が納得する訳ないのだ。