〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第10章 聖戦!HONEY*NOEL ❀信長END❀
「その恋文に書かれている通りだ。俺は、貴様を愛している。そして、この心の臓を貴様にくれてやる」
「信長様……」
「俺はもう、貴様の物だ、美依。ここは…貴様のためだけに鼓動を打つ」
「……っっ!」
「……だがな、げぇむはげぇむだ。貴様の勝ちだ、美依。好きに逃げるが良い、止めはしない」
そう言って、信長様は立ち上がり、私に背を向けた。
そして、そのまま歩き出す。
私を置いて、天主の奥へ。
大きな背中。
それは、いつも私が見ていた姿だった。
いつも強引で、俺様で、自分勝手で。
でも、優しくて、本当は情熱的で……
いつもこの人の姿を目で追っていた気がする。
魔王だの冷酷だの言われていても……
時折見せる表情は穏やかで。
いつも先を見据えていて、そして。
いつも、私を見ていてくれた。
(信長、様……)
あんな熱っぽい瞳で見てきたくせに。
悪戯に身体に触れて、火照らせて。
そして、あんな欲情した瞳を向けてきて……
それなのに、放り出すの?
貴方は、私を。
こんな風に気持ちをぶつけて。
貴方は、逃げるの?
(そんなの、ずるい……!)
「信長様っ……!」
私は立ち上がり、信長様の背中を追った。
そして、近づき、そのまま……
後ろから、ぎゅっと大きな背中を抱き締めた。
温かい背中。
体温が背中越しに流れ込み、思わず息が詰まる。
冷酷と言われていても、この人はこんなに温かい。
「……なんだ」
「ずるいです、信長様っ…」
「狡いとは?」
「こんな風に気持ちをぶつけて逃げるなんて、私は、私はどうしたら……!」
信長様をぎゅっと掴み、思いを伝えるけれど。
言葉が詰まってしまい、出てこなくなった。
すると、信長様は私の手を解き……
くるりと振り返って、こちらを見てきた。
その目は、先程のように熱を孕み……
そして、切なく光っていた。
「貴様がどうしたいかは貴様で考えろ」
「……っっ」
「げぇむに勝ったのだ、好きにするがよい。それとも、俺の気持ちに応えると申すか」
(信長、様……)
そう言われ、私は。
抗えないと、そう思った。
────この人には、一生抗えない