〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第97章 鈍色ラプソディ❀豊臣秀吉❀
「秀吉さんって、案外困った人なんだね」
「美依……」
「すごく勘違いしてるよ。私、そんなに綺麗な人間じゃないし……それに、秀吉さんが言うように私が白で秀吉さんが黒だとしても、それは混ざったらどっちかの一色になるわけじゃない」
美依の言葉が、胸に沁みる。
それは何かの呪文のように……
頑なだった俺の心を溶かしていく。
「きっと灰色になるんだと思うよ。両方の色が混じって、お互いに新しい色になるの。それはお互いをもっと知れた証拠じゃないかな。私は秀吉さんの色が混じるの、すごく嬉しいよ。きっと…今以上に好きになる気がするから」
(混じって、お互いに新しい色に)
美依の言葉は、目からウロコだ。
俺はお前を真っ黒に染めちまうと、それしか考えてなかったからだ。
本当に…こいつには敵わない。
お前は俺が死ぬほど悩んだ事を、あっという間に解決してくれる。
考えてみれば、単純なことだった。
美依を俺の色に染める、それはすなわち……
俺自身も美依の色に染まるということなんだ。
黒と白が混ざれば灰色になる。
鈍色のそれは、決して美しくはないけれど。
互いをもっと解り合えた、新しい色だから。
きっともっと愛せるし、新しい見え方がするのかもしれない。
なんで俺は、そんな事に気づかなかったのだろうか。
────美依、お前は……
本当にこの世で一番良い女だな
「わっ……」
俺が美依を横抱きにし、そのまま立ち上がると、美依は素っ頓狂な声を上げて俺にしがみついた。
俺はそのまま抱いて、部屋に運ぶ。
それはすなわち……褥のある部屋に。
「ありがとな、美依。なんか吹っ切れた」
「秀吉さん……」
「もう迷わねえ、お前を俺なりに愛してやりたい」
「あ……」
ゆっくりと褥に小さな体を降ろして覆い被さる。
やんわりと手の指を絡めて褥に縫い付けたら、美依は頬を染め可愛らしい顔つきで見上げてきた。
その何とも煽情的なこと。
期待しているような瞳は、俺の中の雄を滾らせる。
ずっと心の中で燻っていた欲。
求めては駄目だと、無理やり鎮火させていたから。
今はもう、それがめらめらと燃え上がっている。
抑えが効かない、それは情けないけれど…幸せだ。