〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第97章 鈍色ラプソディ❀豊臣秀吉❀
────本当に……可愛いにも程があるだろ
俺は美依の顔を上げさせ、その額に唇を押し当てる。
こんなに愛しいと思える相手はいない。
だから……俺も迷って苦しんだ。
お前が大切だから、嫌われたくないって。
それが結果的にお前も悩ませた。
結局俺は……お前を想いすぎて、逆に追い詰めていたんだな。
「美依、それは違うぞ。俺がお前を嫌いになるわけないだろ」
「で、でも……」
「ごめんな、悩ませて。俺はお前を抱きたくなかった訳じゃない…お前が大事すぎて、抱くのをずっと躊躇ってたんだ」
「え……?」
美依がその濡れた瞳を丸くさせた。
もう、隠すなんて出来ない。
お前は素直に気持ちを話してくれたから……
俺も話さなきゃ、平等じゃないだろ?
正直、話したら逆に嫌われてしまうのではないかと怖くなる。
でも、それがありのままの俺だから。
お前の知らない……『黒い俺』。
「俺…ずっと自分は"黒"で、お前は"白"だと思ってた」
「……どういう意味?」
「俺は今まであまり綺麗な生き方をしてこなかったし、でもそれだけじゃなくて…お前に対してえげつない感情を持ってたから」
「え……?」
「お前が欲しすぎて、その一線を越えたら…お前が泣いても止めてやれない気がした。きっと抱き潰しちまうって…俺はそういう男なんだよ。でも、お前はどう考えたって真っ白だろ?」
濡れた目元を撫でながら、静かに話す。
話しながらも、自分がみっともないなぁなんて思ったり。
お前は純粋で、こんなに綺麗な涙を流せる。
やっぱり…お前は『白』だよな、と改めて思った。
「真っ直ぐで綺麗で…だから、お前を俺で汚すのが怖かったんだ。その半面で、俺の色に染めちまいたいって……もうどうしようもないだろ」
「秀吉さん……」
「だから、抱けなかった。でも…ずっと欲しかった。お前に魅力がない訳じゃない。お前はいい女すぎて…俺には勿体ないくらいなんだ」
一気に話すと、美依は俺の話を静かに聞いていて。
やがて、俺の首にするりと腕を回してきた。
そして引き寄せられれば、軽く唇が触れ合う。
少し触る程度で離れていったら…美依はなんだか泣き笑いみたいな顔をしていた。