〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第97章 鈍色ラプソディ❀豊臣秀吉❀
(……実際、綺麗なもんじゃないしな)
本当は美依が欲しくて欲しくて堪らない。
想いのままに抱いて、美依を思いっきり愛してやりたい。
でも……きっとその『一線』を超えたら、自分が暴走する気がする。
それこそ優しく出来ずに、抱き潰すまで抱いてしまうかもしれない。
愛しているからこそ、変に臆病になる。
今まで、こんなに躊躇う事はなかったんだけどなぁ。
それなりに楽しい恋はしてきた。
想いを交わす場面も多々あったし、そこそこ場数は踏んできたから自信がない訳ではない。
だが、美依は今まで出会ってきた、どの女とも違う。
可愛くて大切で…あまりに大事だから、傷つけたくないし、ガッカリさせたくないし。
だから迷う、一歩踏み込む勇気が出ない。
俺のえげつない激情を、美依は受け入れてくれるだろうか?
……自分は器用な方だと思っていたけれど、いつからこんなに不器用になったのだろうか。
「ねえ、秀吉さん。今日は…泊まっていっていいのかな?」
「ああ、こんな時間に帰せるわけないだろ?」
「……うん、ありがとう」
そう言って美依は視線を俺の方に向けた。
それに習うように俺も美依を見れば……
月明かりに照らされて、いつもとは違う印象を受ける美依に、またひとつ鼓動が鳴る。
まつ毛の落ちる影や、顔の陰影がやたらと色っぽく見え、可愛らしいと言うより綺麗だ。
そして、吸い込まれそうなほど澄んだ黒い瞳も。
一回見つめてしまえば、もう目が離せない。
「美依……」
そのまま俺はそれが必然であるように顔を近づけ、唇を重ねた。
啄み、角度を変えてまた重ね、それが深くなる。
唇の隙間を割って舌を差し入れて、ゆるりと美依のそれも絡め取ってやった。
舌先で上顎を撫で、口内の弱い部分をやんわりと攻めてやれば、美依は次第に息を荒れさせる。
一生懸命応える姿が可愛くて…また心がぢくりと疼いた。
(かーわいいな…もっとを望みたくなる)
吐息も奪って、深く体も絡んで。
そう出来たらどんなにいいだろう。
お前を俺の色に染められたら…どんなに。
だが、それをすればお前が汚れる。
俺は……それが耐えられないんだ。