〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第97章 鈍色ラプソディ❀豊臣秀吉❀
「んっ…秀吉、さ……」
「……美依………」
甘い水音を立てて唇が離れ、再度見つめ合ったら、美依は瞳が赤く潤んでいた。
頬も赤くなって、表情は若干蕩けていて……
それは"そそる"と言うのか、すごく煽情的だ。
とにかく可愛い、夜に会ってこんな表情をされた日にはもう…その後は決まっている。
二人で褥に行って、抱き合って甘い時間を過ごして。
それが当然で必然なのだけど……
────まだやっぱり、その先は駄目だ
俺は……まだお前を染める勇気が持てない
「美依、寝る支度するか」
「え……?」
「明日も仕事あるんだし、可愛い顔にクマが出来たら大変だからな」
「……」
俺が甘い空気を断ち切って、健全な仕草で頭を撫でると、美依はきょとんと目を開いた。
あ、その顔も可愛いな…じゃなくて!
ずっとこうして触れ合っていたら、先に進みたくて仕方なくなるから。
だから、もう寝てしまうに限る。
自分の高ぶりかけた欲は…まあ何とか収まるだろう。
俺は縁側から立ち上がり、美依も部屋に連れて行こうと手を差し出した。
だが、美依はその手を取ることはせず……
なんだか顔を曇らせ、泣きそうな表情をして口を一文字に結んだ。
「どうした、美依?」
「っ……」
「美依……?」
すると、美依の瞳にみるみる涙が溜まっていき、一回瞬きをしたらそれが筋になって流れた。
それを見て、びっくりしたのは確かだ。
美依が泣いている、俺は変な事を言ってしまったか。
ちょっと慌てて、俺が指で涙を拭ってやると……
美依の口からは予想外の言葉がこぼれ落ちた。
「秀吉さん…ごめんなさい!」
「え?」
「私がもっと魅力的だったら良かったのに、そうしたら秀吉さんに相応しい女になれるのに」
「う、うん?」
……一体、何を言ってるんだ?
なんで謝る、魅力的だったらって……お前は十分すぎるくらい良い女だろう?
俺が美依の言ってる意味が解らず首を傾げると、美依は俺の方を濡れた瞳で見つめてきた。
そのやたら真剣な眼差しにドキッとする。
が……続けて放った言葉は、また意味の解らない言葉。