〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第97章 鈍色ラプソディ❀豊臣秀吉❀
────黒か、白か
俺はどちらかと言えば『黒』に近いと思う。
これまで真っ当な人生を送ってきた訳ではない。
正直、過去には目を背けたくなるくらいで、まともになったのはつい最近。
信長様に出会う前は…汚い事も色々してきたものだ。
だが、お前は『白』だ。
清く純粋で、真面目で素直で。
そんなお前だから、俺は惹かれた。
愛らしい笑顔は眩しく、可愛くて目が離せない。
戦のない世から来たとは言え、よっぽど真っ直ぐに生きてきたんだろうなと言うのはすぐに解った。
だから……迷う。
恋仲になったとは言え、お前を俺の『黒』で染めてしまっていいものなのか。
お前が汚れるだけなんじゃないか?
白に黒を混ぜたら、濁ってしまう。
お前には…いつまでも真っ白でいてほしい。
黒い要素なんて、ひとつもあってはいけない。
求めたくても踏み切れないのは……
きっとお前が黒く染まるのが嫌だからだ。
お前を相手にすると、酷く不器用になる。
今までに楽しんできた恋のように、もっと器用に振る舞えればいいのに……
お前だと出来ない、それは心底惚れてるから。
俺はお前を汚したくないんだ。
葛藤する日々は続いて、今夜は美依と逢瀬。
泊まりに来ても、何も出来ないもどかしさ。
────なあ、美依?
俺は……お前を愛していいんだろうか。
***
「今日は満月だね〜、明るくて綺麗!」
「ああ、雲もないから余計に明るいな」
今夜は満月ということもあり、行燈がなくても濃く影が落ちるほど明るい。
濃紺の空には蜂蜜色をした真ん丸の月、あまりに明るすぎて星すら霞むくらいだ。
そんな中、俺達は縁側に隣り合って座り、月見酒を洒落こんでいる。
と、言ってもお互い酒はあまり強くないから、嗜む程度だけれど。
美依の好きな黒蜜のかかったきな粉餅も用意したし、それをにこにこしながら食べる美依を見るだけで、心は満たされた。
だが───…………
さっきからやたらと落ち着かないのも事実で。
夜に美依と逢瀬をしているからと言うのもあるし、明らかに風呂上がりで御殿へやって来たのが解るから、余計に心が浮つくんだ。