〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第96章 桔梗色の恋情と雪の華❀明智光秀❀
「本当に、愛しいにも程がある」
「光秀、さん……」
「そのように俺を煽ってくれるな。俺は…お前が可愛くて仕方がないんだ、めちゃくちゃにされたくないだろう?」
「……っ」
低く甘い声が、直に注がれる。
浴衣越しに光秀さんの体温と鼓動が伝わって……
ああ、光秀さんもドキドキしてる。
それが解って、なんだか嬉しくなった。
すると、光秀さんは私の額に一回口づけると、上半身を起こして懐に手を入れた。
そのまま何かを取り出し……
私の手にそっと握らせる。
「お返しだ」
「え?」
「お前に、きっと良く似合う」
光秀さんの言っている意味が解らず、私も半身を起こして、その手の中にある物をみた。
小さな和紙の包み。
それを丁寧に開いてみて……
私は思わず目を見開いた。
それは、華奢なデザインの耳飾りだった。
薄青の桔梗の花、そこから細く垂れた鎖の先に一粒石が付いている。
「光秀さん、これっ……!」
私が驚いていると、光秀さんは私の手からそれを取り、優しく耳に飾ってくれた。
そして、それに指で触れながら……
優しい琥珀色の瞳で、私を見つめる。
「お前と恋仲になれた日を、俺が忘れるはずがないだろう?一年前の今日は、俺にとって何よりも忘れられない日だ」
「光秀さん……」
「まさか、お前からも贈り物があるとは思わなかったがな。おかげで…内心、少し乱された」
「……っ」
「知っているか、耳飾りを贈るというのは、こんな意味があるんだ」
そのまま、その耳飾りに口づけられる。
ちゅっ…と甘やかな水音が耳元でして……
光秀さんの口から紡がれた言葉は、もっともっと甘い。
「傍にいたい、もっと一緒にいてくれ…という独占欲の表れだ。礼を言うのはこちらだろう、こんな俺の傍に居てくれて…本当にありがとう。俺も、お前を愛しているよ。だから…いつまでも傍にいてくれ、俺だけの姫」
(………っ)
ああ、言葉が出ない。
私達、同じ気持ちでいたんだ。
もっとお互いの傍にいたいと……
晴れの日も、
雨の日も、
雪の日も、
どんな日だって──……
きっとお互いを想わない日はないのだ。