〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第96章 桔梗色の恋情と雪の華❀明智光秀❀
「この小さな紙包みがどうかしたのか」
「開いてみてください…私から、光秀さんへの贈り物です」
「俺への?」
「……はい」
光秀さんがその包みを開くのを横目で見る。
カサカサと紙が擦れる音がした後。
開いた包みから姿を現したものに、光秀さんの視線が注がれているのを見て……
私は天井に向き直り、ぽつりぽつりと話し出した。
「光秀さん、知ってますか?今日は…私と貴方が恋仲になって、ちょうど一年目なんですよ」
「……」
「その御守りは、いつも貴方の傍にいますよって祈りを込めて…私が作ったんです」
いつも危険と隣り合わせの貴方。
貴方はいつも、自分を大切にしないから。
いつだったかな、信長様が言っていた。
『美依が光秀の歯止めになる』と。
私がいれば、光秀さんは無茶をしないから……
そう思って、いつも手元に持っていられるものを贈ろうと思った。
離れている時、光秀さんが無茶をしそうになったら、これを見て少しは私を思い出してもらえるように。
いつでも待ってます、と。
貴方の傍にいつもいるから──……
必ず、私の元に帰ってきてください。
「私…少し寂しかったんです。お仕事だとは解っていても…光秀さんに何日も会えないと、どうしても寂しいと感じてしまって」
「美依……」
「だから、二人の記念日くらいは一緒に過ごしたかった。わがままですよね…本当にごめんなさい」
「……」
「大好きです、光秀さん。私を好きになってくれて、本当にありがとうございます。私…貴方の恋人になれて、幸せです」
ふわふわふわ。
身体が火照って熱いせいか、ぼーっとしてるせいか。
口から溢れる言葉は、熱に浮かされたうわ言みたいだ。
それでも、心からの本音は零れて。
光秀さんを困らせると解っていても……
────私はいつでも貴方の傍にいたいんだ
「まったく…お前と言う小娘は……」
その時、光秀さんがそう呟いたのが聞こえて。
ため息混じりだったから、呆れられたかなと、そう思った。
だけど、次の瞬間。
私は光秀さんに抱き締められていた。
寝転ぶ私に光秀さんの上半身が覆いかぶさって……
光秀さんは私を褥に押し付けるように抱き締めながら、耳元で少し切なげに声を震わせた。