〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第96章 桔梗色の恋情と雪の華❀明智光秀❀
「……っも、だめぇっ………っっ!」
────正直、温泉から上がった記憶はない
気がついたら、私は光秀さんに抱きかかえられて、宿屋の部屋に運ばれていた。
身体をふわりと褥に降ろされた時……
心配そうに揺れる、琥珀の瞳があった。
でも、心配の色だけではなく。
熱を孕んでいたことも、はっきり解って……
そんな顔、ずるい。
貴方を、怒れなくなってしまう。
意地悪に翻弄されて、火照らされて。
今日は私と貴方の記念日。
おかしいな、貴方を喜ばせるはずが。
私ばっかり、悦んでる──……
「大丈夫か、美依」
「らいじょうぶ、れふ……」
「ゆっくり休め、逆上せさせて悪かった」
おでこに乗った手拭いが、ひんやり冷たくて気持ちいい。
私は褥で横になりながら……
火照った身体を冷まして、小さく息をついた。
完璧に光秀さんのせいである。
元々長湯していたせいもあったけど……
光秀さんに意地悪され、高ぶって、熱を上げて。
温泉であんな事をされれば、逆上せるに決まってる。
(でも、怒れないっ……!)
光秀さんの愛撫に感じて身を任せ、挙句の果てには『もっと』なんて思った自分が居た。
だから、逆上せたのも自業自得。
そうなった原因が光秀さんでも、嫌がらなかった私にも責任はあるのだ。
チラリと視線を横に移せば、心配そうに私を見下ろす光秀さんがいる。
その黄金色の瞳を見ているだけで…
愛しさが湧き上がって、心が熱くなった。
ああ、私
やっぱりこの人が好きだなぁ……
何をされても、怒れない。
むしろ喜ぶ自分がいて。
こうして一緒に居られるだけで……
涙が出るほど幸せなんだ。
恋仲になって一年。
それを身に染みて感じてきたのだ。
私ばっかり喜ぶんじゃなく。
光秀さんにも、喜んでもらいたいな。
「光秀さん……」
「どうした?」
「私が持ってきた巾着を開けてもらっていいですか?そこに小さな包みが入ってるはずです」
私がそう言うと、光秀さんはすぐに私の巾着を持ってきてくれた。
そして、そのまま口を開く。
光秀さんはそこから包みを取り出し……
私にもう一度、問いかけた。