〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第96章 桔梗色の恋情と雪の華❀明智光秀❀
(私、まんまと光秀さんの策にハマった…?)
『期待に応えなくてはな?』
光秀さんの言葉が頭の中をこだまする。
期待に応えなくてはな?って……
私別に、何も期待してないし!
────期待なんか、してないよね?
光秀さんが戻って来るまでの間、ガチガチに緊張して落ち着かなくて。
まるで心の考えを見抜かれたような。
そんな気がして、居ても立ってもいられなかった。
温泉に一緒に入る。
絶対タダでは済まされないと……
それは解っていたはずなのに。
やっぱりどこか心が浮つく自分が居て。
そんな自分が許せなくて、私は何度も何度も『期待なんかしてない』と呟いたのだった。
*****
「何故、そんなに離れている」
「……っそこまで離れてないでしょう?」
光秀さんが戻ってきたのは早かった。
多分もう先を見越して、温泉に入る準備をしてから、私の様子を見に来たのだと思う。
腰に手拭い一枚巻いた状態で、私の元に戻ってきた光秀さん。
目のやり場にも困るし、ひどく落ち着かない。
だから、光秀さんから身体一つ分離れて温泉に浸かっていた。
「いや、十分に離れていると思うが」
「そ、そんな事ないですっ……」
「ならせめて、きちんとこちらを向け」
「む、向きたくなったら向きますから!」
(うー…色気に当てられる……!)
背中の後ろから声を掛けられ、私は俯いたままそれに答える。
私が今、光秀さんに背を向けているのは、どうしても光秀さんを直視出来ないからだ。
それでも、チラっと振り返れば…
お湯も滴る色っぽい光秀さんが目に入り、急いでまた視線を逸らした。
ほのかに上気した肌。
濡れた髪からは、ぽたりと雫が滴って…
その雫が首筋から胸元に流れていくのまで、やたらと艶めかしく見えてしまう。
(本当に目の毒だよ、これっ……)
これは温泉の魔法なのか。
別に裸の光秀さんを見たのは初めてではないのに……
やたらと照れてしまう。
恥ずかしくて、光秀さんをまともに見れない。
おかしいな、仲直りしたかったのに。
これでは、仲直りどころじゃない……!
私が悶々と頭で考えを張り巡らせていた、その時だった。